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財産分与の現時点での退職金計算
妻と夫は、婚姻し、長女、二女が生まれた。
夫は、国家公務員に採用され、以後税務職員として勤務してきた。
妻と夫は、別居した。
妻は、夫に対して、離婚、慰謝料及び財産分与等を求める訴訟を提起した。
本件は、資料からは、事実関係、一審判決等が不明であるので、控訴審で事実上争点となった、退職金及び年金の財産分与の点のみを述べる。
@控訴審は夫が将来受領する退職金の財産分与について、以下のとおり判示した。
夫が現在自己都合により退職した場合に受給できる退職手当金は1632万円で、そのうち別居までの妻との婚姻期間である15年だけが妻の協力を得て勤務していた期間であるから、その退職手当額のうち右婚姻期間分に対応する額である907万円の範囲で財産分与算定の基礎財産となる。
1632万円÷27年×15年=907万円
しかし、夫への退職手当給付は、夫の退職時になされるものであるから、支給制限事由の存在、将来退職したときに受給する退職手当を離婚時に現実に清算させることとしたときには、夫にその支払のための資金調達の不利益を強いることにもなりかねないことも勘案すると、妻に対する夫の退職手当に由来する財産分与金の支払は、夫が将来退職手当を受給したときと解するのが相当である。
夫が定年である60歳まで勤務した場合に受給できる退職手当金は2785万円で、そのうち別居までの妻との婚姻期間である15年に対応する額は1160万円となる。
夫が将来定年により受給する退職手当額は、夫が今後8年余り勤務することを前提として初めて受給できるものである上、退職手当を受給できない場合もあり、また、退職手当を受給できる場合でも、退職の事由のいかんによって受給できる退職手当の額に相当大きな差異があるため、現在の時点において、その存否及び内容が確定しているものとは到底言い難いのであるから、このような夫の将来の勤務を前提にし、しかも、その存否及び内容も不確定な夫の定年時の退職手当受給額を、現存する積極財産として、財産分与算定の基礎財産とすることはできない。
もっとも、夫が将来定年により受給する退職手当額についても、妻が夫と婚姻して別居するまでの間の勤務が含まれ、右勤務の間に妻としての協力があったから、夫が将来定年退職した時に受給できる退職手当額のうち妻との別居までの婚姻期間である15年に対応する額1160万円は、夫が現在自己都合により退職したときに受給できる退職手当額のうち右婚姻期間に対応する額である907万円に比べて増額となる関係にあるので、右のことは民法768条3項の「その他一切の事情」として、考慮する。
(財産分与)
民法第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
A更に、裁判所は、夫が将来退職共済年金を受給できることも「その他一切の事情」として考慮し、結果として、夫は妻に対して「国家公務員退職手当法に基づく退職手当の支給を受けたとき、550万円支払え」と命じた。
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