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預金の持ち出しと婚姻費用分担
妻と夫は、妻の母と同居する目的で自宅を購入した。
建物の名義は、夫が2分の1、妻及び妻の母がそれぞれ4分の1、土地は妻の母の名義。
妻は自宅を出て、夫と別居し、以後同人の母及び子供たちと生活している。
妻は、病院で働いており、年収は250万円である。
妻は、別居に対し、夫婦で築き上げた預金を持ち出し、原審判時点で約550万円を管理している。
従前は、妻と夫が購入した自宅のローンは夫が支払っていたが、夫が支払を停止しているため、妻が管理している前記預金の中から住宅ローンの支払がされている。
夫は、生活協同組合で働いており、年収は約434万円である。
妻は、本件婚姻費用分担調停を申し立てた。
@原審判は、以下のように述べて、別居の翌日である平成15年11月から月7万円の婚姻費用の支払を命じた。
婚姻費用の分担額は、税法等や統計資料に基づいて推計された公租公課、特別経費及び職業費の標準的な割合や、平均的な生活指数を参考にして算出されるべきであるところ、本件においては、同割合を修正すべき特段の事情も認められないから、同割合を参考にし、婚姻費用分担額算定の基礎とすべき妻の基礎収入は、その年収の41.00%である年102万3574円と、夫の基礎収入は、その年収の40.26%である年174万6987円であると定めるのが相当である。
そして、妻世帯の生活指数を210と(妻を100、子らを格55とした。夫は妻の母親に対する生活保持義務を負わないため、妻の母親は考慮に入れていない。)、夫世帯の生活指数を100と仮定すると、妻世帯に配分されるべき生活費は、双方の起訴収入の和に310分の210を乗じた額となるから、その額は年187万6831円となる。
したがって、妻世帯には、年85万3257円の生活費の不足が生じることとなるから、夫は、妻に対し、月7万円の婚姻費用を分担すべきというのが結論となる。
しかるに、夫は、これを全く支払っていないのであるから、夫には、別居の日が属する月の後の月である平成15年11月から起算して、本審判時点において、計21万円の未払いが認められる。
よって、これは即時清算させるのが相当である。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、妻の申立てを却下した。
妻が共有財産である預金を持ち出し、これを払い戻して生活費に充てることができる状態にあり、夫もこれを容認しているにもかかわらず、さらに夫に婚姻費用の分担を命じることは、夫に酷な結果を招くものといわざるを得ず、上記預金から住宅ローンの支払に充てられる部分を除いた額の少なくとも2分の1は夫が妻に婚姻費用として既に支払い、将来その支払に充てるものとしても、それは離婚時に清算すべきもので、夫の婚姻費用分担義務はなくならない旨を主張するところ、確かに、夫婦共有財産は最終的に離婚時に清算されるべきものであるが、離婚又は別居状態解消までの間、夫婦共有財産が婚姻費用の支払に充てられた場合には、その充てられた額をも考慮して清算すれば足りることであるから、妻の主張は理由がない。
しかして、平成16年2月6日時点で妻が管理している預金約550万円は、妻が上記預金から住宅ローンを支払っていることを考慮に入れても、妻が請求する平成15年11月分から現在までの月7万円の婚姻費用の分担額を優に賄うに足りるものであるし、当分の間は夫が負担すべき婚姻費用の分担額に充て得るものである。
したがって、現時点においては、夫には婚姻費用分担義務はないというべきであるから、妻の本件申立ては理由がない。
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