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調停での合意に反する子の拘束
妻と夫は、婚姻し、長女、二女が生まれた。
夫が単身転居したため、その後は、妻が子らを監護養育してきた。
妻は、離婚調停を申し立てた。
その第1回目に、妻と夫の間で、子らが冬休みの間、夫が子らと一緒に暮らせるように、子らを夫の下へ行かせ、子らを妻の下へ帰す合意が成立した。
妻は、本件合意に基づき、子らを夫の下へ行かせたが、夫は、第2回、第3回の調停期日にも子らを同行せず、妻に引き渡すこと拒否した。
夫は、子らの住民票を妻に無断で夫の住所地に移動し、夫の住所地において長女の小学校等の手続を進めている。
妻は、人身保護法に基づき、夫に対し子らの釈放、妻への引渡しを求めた。
@一審は、以下のように述べて、妻の請求を認容した。
夫が、女児である被拘束者らの父親として適さないと、一般的に断定する証拠はなく、夫による監護が被拘束者らの幸福に反することが明白であるとは、特に、長期的な視野でみた場合には、一概にはいえない。
しかし、他方、夫による本件拘束の開始は、前示のとおり、妻と夫の夫婦関係の紛争を、被拘束者らに対する監護を含めて調停するための、裁判所における家事調停手続の場において、夫の是非とも被拘束者らと休暇を過ごしたいという趣旨の、妻のもとに被拘束者らを帰す期限をつけた要望に対し、調停委員の勧めがあって、妻が応じたことを契機とするものである。
したがって、夫、妻及び関係者の間において、被拘束者らの夫のもとでの滞在は、前示約束の期限内の一時的なものであることが了承され、右期限後に、夫が被拘束者らを妻のもとに帰さない事態は、全く予定されていなかったのである。
しかるに、夫は、前示家事調停手続、本件人身保護請求手続を通じて、本件合意に反し、被拘束者らを今後引き続き監護する意思を示し、妻のもとですでに公立の小学校への入学通知書が届いている状況であるにもかかわらず、急遽被拘束者らの住民票を妻に無断で夫の住所に移転し、夫の住所地において、被拘束者らの入学等の手続を進めている。
このような夫の性急な行為は、一般的に、幼児にとって居住環境を安定させること、感じやすい年齢の女児にとって母親の存在が大切であることについて配慮しないものであることに加えて、いたずらに紛争が複雑化することを顧みず、単に被拘束者らを自らの手許にとどめて家事事件手続を自己の望む方向へ進行させようとするものとみられても仕方がないものである
右夫による被拘束者らに対する監護・拘束は父親によるものとはいえ、現時点では、子の幸福を希求する法の趣旨にそわず、すでに開始された家事事件手続の裁判所による運用に対する信頼を損なうものであって、著しく信義則に反し、許されないものというべきである。
A上告審も、以下のように述べて、原判決を維持した。
夫が調停委員会の面前でその勧めによってされた合意に反して被拘束者らの拘束を継続し、被拘束者らの住民票を無断で夫の住所に移転したことなどの事情に鑑み、本件拘束には、人身保護法2条、人身保護規則4条に規定する顕著な違法性があるとものとした原審の判断は、正当と是認することができる。
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