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精神病を原因とした離婚請求
夫は歯科医を開業している。
妻は、母が死亡したことから精神異常の兆候を示し、入院して、退院したが、その後も病状が悪化し、精神病院に入院して控訴審の口頭弁論終結まで入院中である。
妻は、精神分裂症で治療の見込みはないと診断されている。
夫は、妻に対して、民法770条1項4号に基づき離婚と子供たちの親権者を夫と指定することを求める本件訴訟を提起した。
なお、妻については特別代理人が選任されて、特別代理人が訴訟を追行した。
@一審、控訴審とも夫の請求を認容した。
A上告審は、以下のとおり述べて、原判決、一審判決を破棄して、地裁に差し戻した。
およそ心神喪失の常況に在るものは、離婚に関する訴訟能力を有しない。
また、離婚のごとき本人の自由なる意思にもとづくことを必須の要件とする一身に専属する身分行為は代理に親しまないものであって、法定代理人によって、離婚訴訟を遂行することは人事訴訟法の認めないところである。
同法4条は、夫婦の一方が禁治産者であるときは、後見監督人又は後見人が禁治産者のために離婚につき訴え又は訴えられることができることを規定しているけれども、これは後見監督人または後見人が禁治産者の法定代理人として訴訟を遂行することを認めたものではなく、その職務上の地位にもとづき禁治産者のため当事者として訴訟を遂行することを認めた規定と解すべきである。
離婚訴訟は代理に親しまない訴訟であること前述のとおりであるからである。
民訴56条は、「法定代理人なき場合又は法定代理人か代理権を行なうこと能はさる場合に」未成年者又は禁治産者に対し訴訟行為をしようとする者のため、未成年者又は禁治産者の「特別代理人」を選任することを認めた規定であるが、この「特別代理人」は、その訴訟かぎりの臨時の法定代理人たる性質を有するものであって、もともと代理に親しまない離婚訴訟のごとき訴訟について同条は、その適用を見ざる規定である。
そしてこの理は心神喪失の常況に在って未だ禁治産の宣告を受けないものについても同様であって、かかる者の離婚訴訟について民訴56条を適用する余地はないのである。
従って、心神喪失の常況にあって、未だ禁治産の宣告を受けてないものに対し離婚訴訟を提起せんとする夫婦の一方は、まず他方に対する禁治産の宣告を申請し、その宣告を得て人訴4条により禁治産者の後見監督人又は後見人を被告として訴えを起こすべきである。
民法770条は、あらたに「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込がないとき」を裁判上離婚請求の一事由としたけれども、同条2項は、右の事由があるときでも裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却することができる旨を規定しているのであって、民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもって直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきではなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許されない法意であると解すべきであるとした。
(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
人事訴訟法第14条 人事に関する訴えの原告又は被告となるべき者が成年被後見人であるときは、その成年後見人は、成年被後見人のために訴え、又は訴えられることができる。ただし、その成年後見人が当該訴えに係る訴訟の相手方となるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合には、成年後見監督人が、成年被後見人のために訴え、又は訴えられることができる。
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