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共同親権の子の人身保護請求
妻と夫は、婚姻し、長女、二女が生まれた。
夫妻は、兼営住宅に転居し同所で生活していたが、夫婦関係は次第に円満を欠くようになり、夫は、子らを連れて伯母の墓参りに行き、帰途そのまま夫の実家で生活するようになった。
妻は、母と共に夫の実家に赴いて子らの引渡しを求めたが、これを拒否されたため、子らを連れ出したところ、追いかけてきた夫の父と母と路上で子らの奪い合いになり、結局、子らは夫の母らによって連れ戻された。
妻は、離婚調停申立をしたが、親権者等について協議が調わず、不調となった。
妻は、人身保護法に基づき、夫、夫の母、父に対して子らの釈放、引渡しを求めた。
@一審は、以下のように述べて、妻の請求を認容した。
被拘束者らのように3,4歳の幼児にとっては、母親において、監護、養育する適格性、育児能力等に著しく欠ける等特段の事情がない限り、父親よりも母親の下で監護、養育されるのが適切であり、子の福祉に適うものとされている。
そこで、前記の事実に基づいて考察するに、被拘束者らに対する愛情、監護意欲、居住環境の点では、妻も夫も大差は認められないが、父親である夫は仕事のため夜間及び休日しか被拘束者らと接触する時間がないのに対して、母親である妻は被拘束者らが幼稚園に行くまで仕事をせず、育児に専念する考えを持っていることからすれば、妻の下で被拘束者らが監護、養育される方がその福祉に適する。
なお、現在、夫の父が被拘束者らの世話に当たっているが、通常、幼児の成長過程において母親の愛情を必要とすることは論をまたない。
また、経済的な面では、妻は自活能力が十分ではないが、妻の両親が妻を全面的に援助することを約束していることからすれば、この点において、夫ら側と比べて幾分劣るとはいえ遜色はないものと考えられる。
したがって、本件においては、被拘束者らを母親である妻の下で養育することが子である被拘束者らの福祉に適うものと考えられ、結局、本件拘束には顕著な違法性があるといわざるを得ない。
A上告審は、以下のように述べて、原判決を取消し、神戸地裁に差し戻した。
夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡しを請求した場合には、夫婦のいずれに監護させるのが子の幸福に適するかを主眼として子に対する拘束状態の当不当を定め、その請求の許否を決するべきである。
そして、この場合において、拘束者による幼児に対する監護・拘束が権限なしにされていることが顕著であるということができるためには、右幼児が拘束者の監護の下に置かれるよりも、請求者に監護されることが子の幸福に適することが明白であることを要するもの、言い換えれば、拘束者が右幼児を監護することが子の幸福に反することが明白であることを要するものというべきである。
けだし、夫婦がその間の子である幼児に対して共同で親権を行使している場合には、夫婦の一方による右幼児に対する監護は、親権に基づくものとして、特段の事情がない限り、適法というべきであるから、右監護・拘束が人身保護法4条にいう顕著な違法性があるものというためには、右監護が子の幸福に反することが明白であることを要するものといわなければならないからである。
これを本件についてみるのに、原審の確定した事実関係によれば、被拘束者らに対する愛情、監護意欲及び居住環境の点において妻と夫らとの間には大差がなく、経済的な面では妻は自活能力が十分でなく夫らに比べて幾分劣る、というのである。
そうだとすると、前示したところに照らせば、本件においては、被拘束者らが夫らの監護の下に置かれるよりも、妻に監護されることがその幸福い適することが明白であるということはできない。
換言すれば、夫らが監護されることがその幸福に適することがその幸福に反することが明白であるということはできないのである。
B差戻し審は、本件拘束が違法性が顕著な場合に該当する疎明はないとして妻の請求を棄却した。
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