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別居中の子の無断連れ去りの違法性
妻と夫は、婚姻し、長女、二女、三女が生まれた。
夫は、妻に対して暴言を吐いて侮辱し、たびたび殴る蹴るの暴行を加えた。
妻は、3人の子を連れて実家に逃げ帰ったが、夫に連れ戻された。
その後も夫の暴力はやまず、妻は、夫から右側頭部を平手打ちされ鼓膜が破れる傷害を負った。
妻は、3人の子を連れて実家に帰り、夫と別居した。
夫は、妻に無断で、保育園から3人の子を連れ出し、以後妻が子らと会うことも連絡することも禁じた。
妻は、離婚訴訟を提起した。
妻は、3人の子の引渡しを求める本件審判申立をした。
@原審は、以下のように述べて、妻の請求を棄却した。
未成年者3名の親権者の帰趨をめぐっての本案訴訟が既に継続しており、遠くない将来、その判断がされるであろう現状にあるが、かかる状況下においては、子の引渡しの審判と本案訴訟との判断が区々となり、それに伴い短期間の内に子の生活環境等を含む監護養育状況の変化が繰り返され、その心身の安定が害されるような結果となることは、子の福祉の観点から、好ましい事態とはいえない。
とすると、この段階において、子の心身の安定を重視して考慮すべきであり、例えば、監護親による現状の監護状況が劣悪で、緊急にその監護常況から離脱させる必要があるとか本案訴訟において非監護親が親権者と指定されるであろうことが明らかである等の特段の事情がある場合に限り、監護親から非監護親はの子の引渡しを認めるのが相当である。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、夫に対して3人の子の引渡しを命じた。
別居中の夫婦のうち一方配偶者甲が公然かつ平穏に子をその監護下に置き、監護を継続していたにもかかわらず、他方配偶者乙が子を無断で連れ去るなど、違法に子をその監護下に置いたため、甲が引き続き子を監護させる場合に得られる利益と甲に子を監護させる場合に得られる利益を比較し、前者が後者をある程度有意に上回ることが積極的に認められない限り甲による子の引渡し請求を認容すべきものと解される。
なぜならば、乙が、違法な連れ去りによらず、正当に家庭裁判所に子の引渡しを申し立てていれば、乙の監護によって得られる利益の方がある程度有意に甲の監護によって得られる利益を上回ることを明らかにしない限り、その申立は認められないはずであるにもかかわらず、違法に子を連れ去ったことによって、甲がその監護によって得られる利益の方がある程度有意に乙の監護によって得られる利益を上回ることを明らかにしなければならなくなってしまうとすれば、乙が法的ば手段を選択するよりも自力救済を選択することによってかえって有利な地位を獲得することを許すことになり、違法行為を助長する結果を招き、家庭裁判所の審判によって子の奪い合いを抑え、平穏に子の監護に関する紛争を解決することが困難となるからである。
また、違法に子を連れ去る行為は、法律や社会規範を無視することをいとわない行動を採ったことを意味するものであり、そもそも監護者としての適格性を疑わせる事情という側面があることも否定し難い。
前者の利益と後者の利益との間に有意な差異は認められない。
したがって、妻の夫に対する子ら未成年者3名の引渡し請求を認容すべきである。
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