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親権者母死亡後の父への親権者変更
夫と妻は、婚姻し、長女が生まれた。
夫と妻は、別居し、妻が長女と生活していたが、妻は精神状態が不安定になり、妻の母が長女を預かることもあった。
夫と妻は、長女の親権者を妻と定めて協議離婚した。
ところが、妻は自殺した。
夫と母は話し合いの結果、当面母が長女の養育監護をすることとし、長女は母方に引き取られた。
その後、夫と母は未成年者の引き取りや妻の自殺の原因について口論し、以後夫は母方を訪問していない。
母は、未成年者につき後見人選任の申立をなし、母を未成年者の後見人に選任する審判がなされた。
夫は、未成年者の親権者を亡き妻から夫に変更する本件審判の申立をした。
@原審は、以下のように述べて、夫の申立を認め、未成年者の親権者を夫に変更した。
重大な意味を持つのは、やはり夫が未成年者の生物的に実の父であるということであり、実質的にも父に値するということであろう。
そしてまた、ここでは家族とか親子関係とかいうことについての現在のわが国社会の普通の見方は重視せざるを得ないであろうし、また母の年齢等の本件諸事情を踏まえ、今後未成年者が成年に達する頃までの長期的な展望をもってみるならば、当面は環境を変えることが未成年者の精神状態に混乱をもたらし、未成年者に苦痛を与えるであろうことは容易に察することができるのであるが、ここでその障壁を乗り越えさせて、一日も早く、父のもとで生育させることが「自然」というものであり、結局はそれが未成年者の福祉幸福につながる最上の途ということがいえるのではないだろうか。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、夫の親権者変更の申立を棄却した。
本件のような親権者変更申立については、民法819条6項を準用すべきものと解されるが、右申立を許可すべきか否かは、同項が規定する子の利益の必要性の有無によって判断することになり、具体的には、新たに親権者となる親が後見人と同等又はそれ以上の監護養育適格者であり、かつ親権者を変更しても子の利益が確保できるか否かという観点から判断すべきである。
(離婚又は認知の場合の親権者)
民法第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
本件についてこれを見るに、現在未成年者は母夫婦の元でその愛情に育まれた環境の中で安定した生活を送っている。
他方、夫は、未成年者に対する愛情を持ってはいるが、前記のように、未成年者に面会したり、その愛情を示す行為をしておらず、その生活態度に問題がないわけでもない。
しかも夫が未成年者を引き取った場合、同人の実際の養育は夫の父母に頼らざるを得ないところ、右父母は未成年者とはほとんど会っていないし、未成年者に対する愛情は未知数である。
このように、母を失った悲しみをようやく克服しつつあるかに見える未成年者を今新たに、物心がついてからほとんど生活を共にしたことのない夫及びその父母の養育に委ねることは、未成年者にとって大きな苦痛をもたらし、その利益に合致しないばかりか、新たな環境に適応できないおそれがある本件においては、回復が困難な精神的打撃を未成年者に与える可能性がある。
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