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婚姻費用分担額の自動車ローン支払分の控除
妻は、子供たちを連れて実家に帰り、以後夫と別居している。
妻は、夫に対して、離婚と求める調停申立をなし、同調停は不成立となった。
夫は、妻に対して子供たちと面接交渉を求める審判を申立て、子の引渡しを求める審判申立てをした。
また、妻及び夫双方が離婚訴訟を提起した。
妻は、本件婚姻費用分担調停を申し立てた。
妻の年収は426万円、夫の年収は643万円である。
夫が負担している自動車ローンの金額は年額72万円である。
@原審判は、以下のように述べて、婚姻費用分担申立てをした平成15年10月から月9万円の婚姻費用の支払を命じた。
婚姻費用分担額の算定については、現在、婚姻費用や養育費の簡易迅速な算定を目指して、東京・大阪養育費等研究会の提唱する算定方式及び算定表に基づく算定が、全国の裁判所に普及しつつあることに鑑み、本審判においても、同算定方式及び算定表を尊重し、原則として両当事者の年間総収入を別紙算定表に当てはめて婚姻費用分担額を算出する方法によることとする。
同算定方式によれば、給与所得者の場合には、源泉徴収票の支払金額をもって、年間総収入とみることになるが、本件においては、妻と夫の婚姻中に購入されたと認められる自動車のローン代金を夫が負担しているところ、このローン代金については、本来妻と夫が共に負担すべきものであるのに夫のみが負担していると推定されるので、その金額を夫の総収入から控除するのが相当である。
他方、妻が指摘する自動車の保険料は、上記算定方式及び算定表に折込済みと考えられるので、改めて考慮しない。
また、目先の生活に必要と考えられる婚姻費用の分担義務は、将来に備えるための簡易保険の保険料の支払に優先すると考えるのが相当であるから、夫が簡易保険の保険料を支払っている点も考慮しない。
さらに、妻が400万円余りを持ち出した旨夫が主張する点については、その事実があるなら離婚に伴う財産分与に際して考慮することなどが考えられるが、これを婚姻費用分担の判断と同時にあるいはこれに先立って判断すべきとする理由はない。
むしろ、婚姻費用分担についての判断は、権利者の目先の生活に影響するところが大きく、迅速な判断が要請される。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、月7万5000円の婚姻費用の支払を命じた。
上記の新しい算定方式の考え方からすると、原審判が、当事者双方がともに負担するべき自動車ローン支払い関して、夫の給与収入からローン年額を控除した上でこの算定方式を適用したのは相当ではなく、夫の給与収入を直接適用して算定された金額から妻が負担すべきローン月額を控除した額をもって婚姻費用分担金とすべきであったということができる。
そこで、以上に従い、一件記録に表れた諸般の事情を踏まえ、夫が妻に支払うべき婚姻費用分担金の額を算定すると、月額10万円円から12万円までの間の額である月額10万5000円から妻が負担すべき自動車ローン月額3万円を控除した月額7万5000円となる。
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