最初にこちらのページにこられた方はトップページからどうぞ。
財産分与義務者の財産分与の申立
夫と妻は、婚姻し、長女、長男が生まれた。
夫は、同人が経営する店の従業員の女性と不貞関係を続け、女性との間に生まれた子を認知した。
夫は、東京で女性とその子と生活するようになり、月1、2回は妻の住む大阪の家に泊まっていた。
夫は、このような生活が20年余り続いた後、離婚調停の申立てをしたが、不調となった。
夫は、妻に対して、本件離婚訴訟を提起し、離婚後の妻の生活の保障として1億5000万円の提供を申し出て、予備的申立てとして、右金額を上限とする財産分与の申立てをした。
@一審は、夫と妻との別居状態の開始は、夫が離婚調停中に妻宅への出入りをやめた時点からであり、別居期間が長期に及んでいるとはいえないとして、有責配偶者である夫の離婚請求を棄却した。
A控訴審は、夫と妻の婚姻関係は昭和40年以降破綻状態にあると認定して、夫の離婚請求を認容した。
なお、夫が昭和40年以降も所用で大阪に来たときや正月には、妻の住む家に泊まっていたことについては、夫が事業等の関係から体裁をとる必要があったこと、大阪の家が自分の家であるとの意識が強かったことによるものであり、妻に対する愛情や同人との婚姻生活継続の意思によるものではないと認定した。
しかし、夫の予備的財産分与の申立てについては、以下のように述べて許されないとした。
離婚に伴って相手方配偶者に対して財産分与をなすべき義務を負う者が離婚請求に付随して財産分与の申立てをすることは、以下の理由により許されないものと解するのが相当である。
1、離婚した当事者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるところ、財産分与について協議が成立しないときは、当事者は家庭裁判所に対して財産分与の処分を求めることができ、また、右申立ては、離婚請求訴訟において、付随的申立てとして行うことができる。
右申立ては、財産分与請求権の具体的内容の形成を求めるものであるから、財産分与を請求する者を申立権者として予定しているものと解するのが相当である。
一方、財産分与の義務を負う者は、協議や裁判所の処分によってその具体的内容が確定するまでは、相手方配偶者に対して現実に財産を分与する義務を負うことはないのであるから、このような者が自ら財産分与の具体的内容の形成を求める申立てを行なう必要を生ずることは通常考えられないところであり、申立権を認める必要はないと解される。
2、有責配偶者の離婚請求の許否と離婚が成立した場合の財産分与とは別個の問題であり、離婚訴訟と同一手続内で財産分与について判断し、その具体的内容を確定しなければ、離婚請求の許否について判断ができないとか、財産分与の内容いかんによって離婚請求に関する判断が左右されるという性質のものではないから、有責配偶者からの離婚請求の場合に、特に義務者からの財産分与の申立を認めるべき理由はないというべきである。
3、有責配偶者からの離婚請求訴訟において、被告となった相手方配偶者は、離婚請求を争っている場合でも、右請求が認容された場合に備えて、予備的に財産分与の申立をすることができると解されるが、相手方配偶者が予備的に財産分与の申立をせず、もっぱら離婚請求の当否のみを争っている場合には、裁判所が財産分与の要否並びに分与の額及び方法を定めるに当たって考慮すべき分与の対象となる財産の内容、総額や財産の形成・維持に対する当事者の貢献の内容について、相手方配偶者からの積極的な主張、立証を期待することはできない。
このような場合に有責配偶者からの申立に基づいて財産分与に関する処分を行うことからすると、裁判所は、実際上、職権でこれらの事情を探知することは困難であるから、主として財産分与の義務を負う有責配偶者の主張立証事実に基づいて財産分与の具体的内容を決定せざるを得ないこととなり、離婚による相手方配偶者の経済的不利益の救済として必ずしも十分な効果が期待できない。
したがって、この場合には、離婚確定後家庭裁判所における調停、審判手続によって財産分与請求権の具体的内容の形成をはかるのが相当であると考えられる。
慰謝料などの無料法律相談はこちらから
Amazonで慰謝料について調べる
|
|