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子の無断連れ出しの監護者指定
妻と夫は、婚姻し、長女、二女が生まれた。
夫は、離婚調停申立をしたが、調停は不成立となった。
夫は、散歩と称して長女を連れて自宅を出て、妻に長女と一緒である旨の電話連絡をしたものの、その所在を明らかにしなかったことから、妻は、子の引渡しを求める審判とその審判前の保全処分の申立をなし、更に、離婚訴訟を提起し、長女の引渡し、長女、二女の監護者を妻に定めることを求める本件審判の申立をした。
夫に長女の引渡しを命ずる仮処分審判が下され、確定したが、夫は、代理人弁護士を通じて、裁判所の決定に従う意思がないことを表明した。
夫は、大宮市の賃貸マンションで、長女、夫の実母と生活していた。
家裁調査官立会いの上での面接調査の際、長女は妻に対して激しい拒否的態度を示した。
@原審判は、以下のように述べて、夫を長女の監護者に指定し、妻の長女の引渡しを求める申立を却下した。
妻も夫も監護権者として格別に問題とすべき資質があるとは認められない。
長女の養育環境は前記審判前の保全処分時に比べると好転しているといえる。
主として長女を監護しているのは夫の実母であると認められるが、従来から長女とは祖母としての交流を保っていたものであり、夫の実母に長女を監護させることで長女の福祉上問題が生じるとも思われない。
その点からいえば、妻も有識者であって、妻が仕事についている間の子供の監護は妻の実母が行なっているのであるから、妻と夫との間でそれほどの格差があるとはいえない。
当庁での面接の際長女が妻に対して示した拒否的な態度は、裁判所も予想し得なかった激しいものであった。
長女としては、父母の対立による姉妹の分断はやむを得ない前提として、良好な関係にある夫と暮らすことを選択するといういわば苦渋の選択を表明したのではないかと判断されるのであって、そのような長女を、今度は夫と引き離すことは、長女にさらなる精神的な外傷を与えこそすれ決して分断された長女の福祉を回復するものではない。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、家裁に差し戻した。
まず、長女の監護状況についてみるに、夫が妻に無断で長女を連れ出すまでは、長女と同居していたのは妻や妻の実母であるから、近隣に住んでいたとはいえ、夫の実母と長女との接触時間より妻や妻の実母との接触時間が圧倒的に長かったと推測される。
夫は、長女と遊んだり共に就寝したりすることはあっても、日常生活上基本的な監護養育に当たったことはほとんどなく、仕事の都合を理由に人身保護手続に一度も出頭しなかったことを考えても、同じ有識者ではあっても、妻の方が長女との接触時間を長くとることができるとみるのが相当である。
また、長女は、その年齢等からすれば、まだ母親によるきめ細かな配慮に基づく監護が必要な生育段階にあると考えられるし、二女と分断して養育されることによって生じ得る心身発達上の影響についても慎重な配慮をする必要がある。
さらに、夫は、妻の下から長女を無断で連れ出し、家庭裁判所や高等裁判所の保全処分の決定にも従わず、地方裁判所の人身保護手続にも全く出頭しなかったのであり、そうこうしているうちに、長女は次第に夫らとの生活に安定を見いだすようになったという側面があることは否定できないのであって、その現状が安定しているからといって、安易に現状を追認することは相当ではない。
そうすると、妻と夫との監護権者としての適格性や養育環境については優劣付け難いとした原審の判断は、直ちにこれを相当として是認することはできず、上記の点につき更に審理を尽くさせる必要がある。
確かに、面接調査時における長女の妻に対する拒否的な態度は驚くほど強いものであるが、現在の監護者である夫らからの影響が全くないとはいいきれないし、5、6歳の子供の場合、周囲の影響を受けやすく、空想と現実とが混同される場合も多いので、たとえ一方の親に対する感情や意向を明確にしたとしても、それを直ちに子の意向として採用し、あるいは重視することは相当ではない。
したがって、長女が面接の際に示した態度が何に起因するものであるかを慎重に考慮する必要があり、いまだ6歳の長女が一度の面接調査時に示した態度を主たる根拠として監護者の適否を決めてしまうことには疑問がある。
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