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面接交渉の調停の間接強制
妻は、夫に対し、長男の親権者指定、面接交渉を求める調停申立をなし、次の内容の調停が成立した。
1、当事者双方は、当事者間の長男の親権者を夫と定める。
2、夫は、妻に対し、妻が長男と毎月2回面接することを認め、その方法、場所等については、妻において良識にかなった面接方法を選択することができるとし、特に制限をしない。
3、当事者双方は、面接場所は、夫の自宅以外の場所とする。
4、妻と夫は、長男が通っている保育所の行事への参加等については、これを協議して定める。
5、夫は、妻に対し、長男の保育記録等の成長を記載した記録を随時見せることを約束する。
妻は、調停成立後、長男と1回面接交渉をしたが、その後は、妻が妊娠した子を産むか産まないかで夫と意見が対立したことから、長男との面接交渉は実現できなかった。
妻の申立により、面接交渉の履行勧告がされたが、夫はこれを拒否した。
妻は、前件調停条項第2項に基づき、面接交渉の間接強制等を求める本件申立をした。
@原審は、妻の申立を認め、以下の主文の審判を下した。
夫は、妻に対し毎月2回妻の指定する日時、場所において、両者間の長男と面接交渉させよ。
夫が、審判送達の日以降において、前項の債務を履行しないときは、夫は、妻に対し、1回につき金5万円を支払え。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、間接強制の申立を却下した。
調停条項のうち、債務名義として執行力を有するのは、当事者の一方が他方に対し、特定の給付をなすことを合意の内容とする給付条項のみであり、特定の権利者もしくは法律関係の存在又は不存在を確認する旨の合意を内容とする確認条項については、債務名義にはならない。
そして、ある調停条項が、当事者の給付意思を表現した給付条項であるか、権利義務の確認にとどまる確認条項であるかは、当事者の内心の意思によって決まるものではなく、調停条項全体の記載内容をも参酌しつつ、当該調停条項の文言から客観的に判断すべきものである。
本件においては、上記調停条項の第2項は、「夫は、妻に対し、妻が長男と毎月2回面接することを認め」と記載されているのみであり、その文言から直ちに夫が特定の給付をなすことを合意したことを読み取ることはできない。
かえって、同調停条項で使用されている「認め」との表現は、裁判所において調停条項や和解条項が作成される場合に確認条項を表示する場合の常套文言であり、仮に給付条項とするのであれば当然「面接させる」等の給付意思を明確にした表現がされるべきものであるから、特段の事情のない限り、上記調停条項第2項は給付条項ではなく確認条項にとどまると解される。
もっとも、上記調停条項第2項には、面接の「方法、場所等については、妻において良識にかなった面接方法を選択することができることとし、特に制限をしない」との記載もあり、面接の方法、場所等について妻に選択することが認められている。
しかし、面接の方法、場所等について妻に選択する権利があるといっても、現実に長女と面接を行なうに当たっては、事前の連絡、調整等が当然必要になるものであること、上記調停条項には、今後の長男の監護に関し、当事者間の協議を予定していることが明らかな条項も存することなどを考慮すると、妻が面接の方法、場所等について選択することができるとされているからといって、上記調停条項第2項をもって確認条項ではなく、給付条項であると解することはできない。
そして、他に、上記調停条項第2項をもって給付条項であると解するに足りる特段の事情を認めることはできない。
そうすると、上記調停条項第2項をもって給付条項と解することはできず、これを債務名義として強制執行の申立をすることはできないといわざるを得ない。
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