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公正証書で合意した養育費の減額
夫と妻は、婚姻し、長女、二女、三女が生まれた。
夫と妻は、未成年者らの親権者をいずれも妻と定めて協議離婚した。
夫と妻は、離婚に先立ち公正証書において以下のような合意をした。
第1条 離婚に当たり、双方間の長女、二女及び三女の親権者・監護者をいずれも妻と定める。
第2条 1 養育費は、3子分として昭和61年8月より同64年8月まで20万円あて、同年9月より長女、二女、三女が満23歳になるまで毎月末日限りそれぞれ10万円あて計30万円を支払う。ただし、昭和64年9月以前に夫が海外勤務となった場合は、その月よりそれぞれ10万円合計30万円とする。
2 養育費の他、子の入学、結婚、病気その他の自己等により臨時出費あるときは原則として夫の負担とし、双方協議の上別途相当額を妻に支払うものとする。
離婚後、夫は他の女性と再婚し、妻も他の男性と再婚し、男性は未成年ら3名と養子縁組をした。
夫は、パイロットとして航空会社に勤務しており、妻は、男性が経営する麻雀荘の手伝いをしている。
夫は、夫の再婚等により事情の変更が生じたとして、妻に対して上記養育費の支払の免除ないし減額を求める本件審判の申立をした。
なお、夫は、本件合意事項に基づく養育費の支払を遅滞したため、妻から給料債権の差押を受けた。
裁判所は、以下のように述べて、本件公正証書中第2条1を、未成年者らの養育費として、それぞれが成年に達する月まで1人当たり毎月7万円の支払を命じることに変更し、第2条2の臨時出費の負担義務を免除した。
当該合意がなされた当時予測ないし前提とされ得なかった事情の変更が生じた場合にこれを変更しえることも、事情変更の原則ないし民法880条に基づき肯定されるべきである。
(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
民法第880条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。
夫及び妻双方の再婚、未成年者らと男性との各養子縁組等の事実は、本件合意事項が交わされた当時、現実問題として当事者双方とも予想しあるいは前提とし得なかったと解されるのである。
しかして、このような事情に伴い、夫及び妻及び双方の側の収支を含む生活状況は、本件合意事項を交わした当時と比較して相当変化しているものと考えられるので、本件公正証書で成立した本件合意事項に基づく養育費の支払いないし負担義務を現在もそのまま夫に負わせることは、これが今後も相当長期間にわたる継続的給付を内容とするものであることにも照らした場合、客観的に相当性を失した状況になっていることは否定し得ないものと解される。
そして、生活保護基準方式に従い養育費を算定し、その際、妻側の基礎収入は、妻の固有の収入はなくもっぱら男性の収入によっているので、男性の収入から算定した。
また、未成年者らが男性と養子縁組していることから、支払の終期を各自が成年に達する月までとした。
更に、未成年者らはいずれも男性と養子縁組をしているので、未成年者らの入学、結婚、病気等の場合に必要とされる臨時出費の負担は、第一次的にはやはり、妻と男性において考慮すべきが筋合いと解される。
もとより、未成年者らの父である夫もかかる費用の負担を全く免れるわけにはゆかない面があると解されるが、これらの費用が全て生活保持義務の範囲に含まれるとは解し難いことも考え合わせると、現時点においては、本件公正証書中の本件合意事項第2条2に基づく夫の義務は、これを免除しておくのが相当と思料するのであるとした。
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