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イギリス人父と日本居住の子との面接交渉
イギリス人の夫と日本人の母は、婚姻し、東京都内で生活を始めた。
なお、夫には、妻との婚姻前に2度の婚姻暦がある。
長男が生まれた。
夫と妻は、一家で香港に転居したが、夫婦喧嘩が絶えず、長男を連れて日本に帰り、夫と別居した。
妻は、東京家庭裁判所に離婚調停の申立をなし、長男の親権者を妻と定めて調停離婚が成立した。
調停調書には、夫と長男との面接交渉の条項は特にもうけられていなかったが、妻が夫に対して面接交渉を求める旨の合意が事実上成立していた。
夫は、離婚後しばらくは長男と面接交渉を行なっていたが、夫が、妻の親友と交際したことがきっかけとなり、妻は夫と長男を合わせなくなった。
夫は、面接交渉を求める調停申立をなし、本件審判に移行した。
なお、夫は、ロンドンから東京に転居し、妻の親友と結婚した。
裁判所は、次のように述べて、以下の審判を下した。
@主文
夫は、長男が高等学校を卒業するまで、長男が通学する学校の春期及び冬期の休暇の各期間中の1日を、同じく夏季の休暇の期間中の3日間を、それぞれ長男の所在する場所を訪問して長男と面接することができる。
夫は、長男が妻のもとを離れて夫と面接することを希望する場合には、妻の監護権を侵害しない範囲内で第1項に定める期間を、長男の希望に従う方法で面接することができる。
この場合は、妻は夫と長男との面接交渉に協力しなければならない。
特に、第1項に定めるもののうち、夏期の休暇の期間中の3日間を旅行する方法で面接する場合には、夫と妻とは旅行先及び日程につき十分協議するものとし、この場合の旅費その他の費用は夫の負担とする。
A未成年者の監護に関する問題については未成年者の住所地の裁判所に裁判管轄があるとするのが各国国際私法の原則と解されるところ、長男の母である妻はもちろんのこと、長男の父である夫は日本に住所を有し、長男も妻のもとに居住するものであるから、長男本人の監護に関する裁判については日本の裁判所が裁判権を有し、かつ、その住所地を管轄する当裁判所が管轄権を有していると解される。
そして、未成年者の監護に関する問題は、親子間の法律関係に属するものと解されるから、本件準拠法は法令20条により父の本国法によることになる。
ところが、父の本国法であるイギリスの国際私法原則によると、当事者の双方は一方が住所を有する地の法律を適用すべきものと解されるから、本件については法令29条により結局日本の法律が適用されることになる。
長男が現在日本の小学校に在校する児童であり、妻の長男の教育方針としてはおそらくここしばらくは日本において学校教育を受けさせるであろうこと、更に、長男が日本人と英国人との混血と一見して分かる風貌を有していることなどから、長男は日本の社会内にとどまらず、将来、より広く国際人として活躍し始めるかも知れないことは、妻が考えるとおりであること、仮にそうであるとすれば長男が日本の高等学校を卒業するころがその将来の生き方を決定する一つの転機となる時期であろうこと、現在、長男は英語の会話能力はないがその時期に至ればその能力の有無も判断できるであろうこと、その他諸般の事情を総合して判断すると、夫としては、長男と面接するにあたってイギリスまで連れて行きたい意向を有しているであろうが、当裁判所は、とりあえず、長男が日本の高等学校を卒業する時期までは日本においての面接交渉について定めることとし、それ以降の面接交渉については改めて当事者間において協議して定めるのを相当と判断するものである。
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