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フランス人夫の暴力による離婚請求
日本人の妻は、仕事のため日本で生活していたフランス人の夫と知り合い、仕事を終えて帰国する夫とともに渡仏した。
妻と夫は、パリ第3区区役所に婚姻届を提出し、長男が生まれた。
妻は、夫から暴力を受けたとして夫を告訴し、長男を連れて家を出て、日本の帰国し、以後夫と別居している。
妻は、フランスの裁判所に離婚調停手続を申し立てたが、これを取下げた。
夫は、妻に対して、暴行を加え、日常生活への支障が8日間を超えない傷害を負わせた罪により、フランスの裁判所で有罪判決を受けた。
妻は、夫に対して、離婚、長男の親権者を妻と定めること、慰謝料として1000万円の支払を求める本件訴訟を提起した。
@裁判所は、以下のように述べて、離婚、長男の親権者を妻と定め、夫に対して300万円の慰謝料の支払を命じた。
妻としては、こうした夫の暴行等により、このまま夫との婚姻生活を継続した場合には、妻や長男の身体ひいては生命に危害が及ぶものと考え、やむを得ず、乳飲み子であった長男を連れて日本に帰国し、両親の保護を求めたものと認められ、妻の行動は、その経緯に照らすと合理性があり、妻が日本へ帰国することを余儀なくしたのは、専ら夫のこうした言動にあるというべきである。
そもそも、生命、身体の自由、安全を求める権利は、人が人として当然に保有する権利であって、何人もこれを犯すことはできないとし、その権利性は、国際人権規約の条項等を指摘するまでもなく、いずれの国においても尊重されるべき普遍的権利であるというべきである。
その権利は、正当防衛等特に法が許容した場合以外には犯すことができないのであって、ただ、婚姻関係にあるというだけで、夫から妻への暴行等を許容し得ないことはいうまでもない。
そして、広く世界的に制定されているDV防止法の立法趣旨等に鑑みれば、配偶者から暴力行為を受けた他方配偶者は、その制定がない場合においても、人格権に基づき、その接近等を排除する権利を有するものというべきであり、訴訟提起、遂行等のために、相手方配偶者と接近することを余儀なくすることが相当でないことはいうまでもない。
そして、証拠によれば、フランス民法251条1項は、「共同生活の破綻によって、又は有責事由によって離婚を請求するときは、勧解の試みが裁判上の審理の前に義務付けられる。」とし、同法252条1項は、「裁判官は、夫婦を勧解しようと務めるときは、その立会いの下に夫婦を合わせる前に、個別に夫婦のそれぞれと個人的に話し合わなければならない。」としている。
したがって、本件で、妻がフランスにおいて離婚を請求しようとする場合、妻の請求する離婚はフランス民法にいう有責事由による離婚であるから、裁判官が勧解の試みを行なう必要があり、その際には、当事者の出頭が義務付けられ、その結果、妻は、フランスに入国し、滞在しなければならなくなる。
しかし、先に判示した妻が日本へ帰国するした経緯、妻の帰国後に調査会社による不審な行動があること等に照らして考えると、妻にフランスに入国し、滞在することを求めることは、妻を夫から従前同様の暴力等を加えられる危険にさらす可能性を高めるものというべきであって、妻の人格権の保護の要請にそぐわないというものである。
そうすると、妻が夫の住所地国であるフランスに離婚請求訴訟を提起することについては、妻の生命、身体が危険にさらされるという事実上の障害があり、夫が妻の首を絞め、絞首のあとを残したこともあるという事実を考えると、その程度は、妻の生命に関わるもので、障害の程度は著しいものというべきである。
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