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親権者指定後短期間での親権者変更
妻と夫は、婚姻し、長女が生まれたが、妻と夫は、双方の性格、生育環境、生活感覚の違いから相互に不満を積み重ね、妻は、離婚を決意し、身の回りの物を持ち、長女を連れて実家に戻った。
妻は、離婚調停の申立をなし、当初離婚に反対していた夫も離婚を受け入れることになったが、長女の親権者については双方が譲らなかった。
調停において、妻が夫がどうしても応じないならば、長女の親権者を夫とするのでも致し方ないとの意向を示したため、同日、長女の親権者を夫と定め、夫は妻に対して長女との面接交渉を認めるとともに慰謝料50万円を支払うことを内容とする離婚調停が成立した。
夫一家は、妻の実家に行き、長女の引渡しを受けた。
以後、長女は夫の両親方に居住し、夫の両親、主として父親が世話をしている。
妻は、親権者変更の調停申立をなし、不調となり、本件審判に移行した。
@原審判は、妻と夫双方及び援助者である両親のいずれにも、親権者としての適格性に問題とすべき点はなく、長女に対する愛情の度合い、精神的側面、経済的側面を含めて、監護の意思及び能力、家庭環境、居住環境には大きな差異はないと認定した上で、「3歳に達したばかりの女児にとって、母親の存在の重要性は疑いのないものというべきであり、また、妻方にあっては、妻の勤務の状態からしても、長女と妻とのスキンシップが常時保たれるかたちでないところではあるが、それも未だ比較的短期間にすぎないことを考慮すれば、本件においては、現状尊重の原理は母性優先の原理にその道を譲るべきものであると考えるのが相当であるとして、夫から妻に親権者を変更する審判を下した。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、妻の親権者変更の申立を却下した。
長女が未だ3歳であって、一般的には母親の監護養育に馴染む年齢であることや、夫や妻の職業、勤務時間等を比較した場合に、妻の方が長女とより多く接する時間を持つことができると思われることなど、妻を親権者とした方が事件本人の養育監護の上でより適切と思われる事情もないではないが、他方、長女は夫のもとに引き取られて後、夫及びその両親の養育監護の下でそれなりに安定した生活を送っているのであるから、それを短期間で覆し、新たな監護環境に移すことがその心身に好ましくない影響を及ぼすことは明らかであり、これらを総合的に考慮すれば、現時点において、長女の親権者は夫から妻に変更することが必ずしもその健全な成長を図る上で有益であるとはいえないと考えられる。
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