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婚姻費用の分担額の算定
夫と妻は別居した。
夫は、離婚調停申立てをなし、これが不成立となり、離婚訴訟を提起した。
妻は、本件婚姻費用分担の調停申立てをし、審判に移行した。
妻は、別居後長男とともに、同人の父母方に生活し、ピアノの個人教授をして1ヶ月約2万円前後の収入がある。
夫は、会社員で、給与所得から所得税及び社会保険料を控除した額は、約296万円である。
更に、夫の父が死亡し、夫は、約6億6000万円の財産を相続し、その相続税とその延納により支払うべき利子税との合計は約5億円である。
@原審は、以下のように述べて、夫に対して、婚姻費用として直ちに150万円及び昭和57年2月以降別居解消又は離婚成立に至るまで、毎月14万円の支払を命じた。
婚姻中の夫婦は互いにその婚姻費用を分担する義務があり、たとえ夫婦の関係が破綻し、離婚訴訟中であっても同様であり、専らいわゆる有責配偶者と認められない限り、婚姻費用の分担を他方に請求できるところ、その分担額は各自の資産・収入及び従前の生活状態あるいは別居に至る経緯等の諸般の事情を考慮してこれを決すべきである。
そこで本件におけるその分担額については、まず、当事者の婚姻生活の破綻が専らいずれの当事者にあるともにわかに認められないこと及び夫の収入・資産等を考慮し、さらに当時者の過去・現在の生活状況等に諸般の事情を考え併せてこれを決すべきところ、夫の妻に対する婚姻費用の分担額は諸般の事情を考慮し、金150万円とする。
なお、夫は前記多額の相続税及び利子税をすべて納めておらず、その納税の負担は大きいといえるが、右税に見合う資産を保有し、不動産収入もあり、また、配偶者と未成熟子に対する扶養の意味を有する本件の婚姻費用分担義務はいわゆる生活保持義務であり、納税に優先してこれを負担する義務があるというべきである。
A抗告審は、以下のように述べて、夫の抗告及び妻の附帯抗告をいずれも棄却した。
夫と妻は、婚姻から別居に至るまでの間、就**区マンションに住んでいた当時、専ら夫が勤務先から得る給与所得によって家庭生活を営み、夫の相続財産又はこれを貸与して得た賃料収入は、直接生計の資とはされていなかったものである。
従って、夫と別居した妻としては従前と同等の生活を保持することができれば足りると解するのが相当であるから、その婚姻費用の分担額を決定するに際し、考慮すべき収入は、主として夫の給与所得であるということになる。
以上のとおりであるから、夫が相続によりかなりの特有財産を有していても、また、夫が右相続により相当多額の公租公課を負担していることも、いずれも、本件において夫が妻に対して負担すべき婚姻費用の額を定めるついて特段の影響を及ぼすものではないというべきである。
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