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日本居住の米国人夫妻の離婚請求
夫は日本で生まれた日本人であるが、米国軍に従軍し、渡米して、米国アリゾナ州で米国籍を取得した。
妻は、日本で生まれた日本人である。
夫と妻は、沖縄県で知り合い、那覇市で婚姻の届出をし、渡米して、ジョージア州に、その後テキサス州及びバージニア州に、その後はメリーランド州に居住した。
妻は、メリーランド州で帰化して米国籍を取得した。
夫は、米国陸軍軍属として日本に配属され、妻と共に来日した。
長男が沖縄で生まれた。
妻は、長男を連れて夫と別居した。
夫は、妻に対して、離婚、長男の親権者を夫と定めることを求める訴訟を提起し、妻は、離婚、長男の親権者を妻と定めること、財産分与、慰謝料を求める反訴を提起した。
裁判所は、以下のように述べていずれの点についても日本法を適用し、夫妻の双方の離婚請求を認め、長男の親権者を妻と定め、夫に対して150万円の慰謝料及び150万円の財産分与の支払を命じた。
@離婚請求について
夫妻は、共に米国籍を有するところ、米国は、法例28条3項にいう「地方により法律を異にする国」すなわち不統一法国に当たるが、同条項にいう「規則」は、米国にはないとされているので、夫、妻の本国法の決定は、同条項の「最も密接なる関係ある地方の法律」によることとなる。
そして、夫妻の米国籍取得の事実によれば、夫の本国法はアリゾナ州法、妻の本国法はメリーランド州法であるものと認められる。
したがって、夫妻にとって共通本国法は存しないことになる。
夫は、夫の母が徳島県に1人で住んでいることなどから、日本に相当期間定住する意思で自ら希望して米国軍属として、同じく沖縄県を郷里とする妻と共に前記のとおり来日し、以後10年間以上日本に定住していることが認められるから、夫妻は、日本を常居所としているものであり、日本民法が共通常居所地法と認められる。
A財産分与及び慰謝料請求について
離婚に伴う財産分与及び離婚そのものによる慰謝料請求については、いずれも離婚の際における財産的給付の一環をなすものであるから、離婚の効力に関する問題として、法例16条本文によるべきものと解するのが相当であり、本件においては、日本民法が適用されることになる。
B親権者指定について
親権者の指定については、子の福祉の観点から判断すべきもので、離婚を契機として生じる親子間の法律関係に関する問題であるから、法例21条によるべきものと解するのが相当である。
そこで、まず、子である長男の本国法について検討するに、夫妻についての前記認定の事実に加え、長男は米国籍を取得したが、日本で出生して以来、引き続き現在まで日本に居住し、米国には約2ヶ月間旅行したことがあるにすぎないことに照らすと、長男にとって、米国内に「最も密接なる関係ある地方」を存せず、法例21条の適用としては、「子の本国法が父又は母の本国法・・・と同一なる場合」には該当しないものと解するのが相当であり、「子の常居所地による」こととなる。
長男は、日本を常居所としているものと認められるから、親権者の指定についても、日本民法が適用されることになる。
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