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面接交渉拒否による不法行為責任
夫と妻は、婚姻し、長男が生まれた。
妻は、長男を連れて実家に帰り夫と別居した。
妻は、離婚を求めて調停申立をしたが、不調となり、夫は、長男との面接交渉を求める調停申立をしたが、これも不調となった。
夫は、離婚等請求訴訟を提起し、訴訟は調停に付され、長男の親権者を妻と定めて調停離婚が成立した。
調停条項には、「妻は、夫に対し、長男と2ヶ月に1回、1回につき2時間程度面接することを認め、夫からの申出により、日時、場所、方法等について協議することとし、妻は子の面接交渉が円滑に行なわれるように誠意を持ってこれにあたる。
なお、面接場所については、子の意思を尊重する。」と定められていた。
夫妻間で、公園で面接交渉を実施するとの協議が成立したが、その時刻に妻は現れなかった。
その後、夫の申出により、家裁調査官から妻に対し面接交渉の履行勧告がなされたが、妻はこれにも応じなかった。
夫は妻に対して、長男との面接交渉を妨害した等として不法行為に基づく500万円の損害賠償請求訴訟を提起した。
@裁判所は、以下のように述べて、夫の請求を認め、妻に対して500万円の支払を命じた。
子との面接交渉権は、親子という身分関係から当然に発生する自然権である親権に基づき、これが停止された場合に、監護に関連する権利として構成されるものといえるのであって、親としての情愛を基礎とし、子の福祉のために認められるべきものである。
妻が夫の許を離れて別居するに至ったのは、本件調停の経過や調停離婚成立の過程を併せ考慮すれば、決して夫が自己本位でわがままであるからというのではなく、むしろ、妻の親離れしない幼稚な人格が、家庭というものの本質を弁えず、子の監護養育にも深く考えることなく、自己のわがままでしたことであって、そのわがままな態度を夫に責任転嫁しているものという他なく、右妻の別居に至る経過が今回の面接交渉拒否の遠因となるとする妻の主張は到底採るを得ない。
妻が夫に対して長男との面接交渉を拒否したことは、親権が停止されているとはいえ、夫の親としての愛情に基づく自然の権利を、子たる長男の福祉に反する特段の事情もないのに、ことさらに妨害したということができるのであって、その妨害に至る経緯、期間、妻の態度などからして夫の精神的苦痛を慰謝するには金500万円が相当である。
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