最初にこちらのページにこられた方はトップページからどうぞ。
年金の財産分与
妻と夫は、婚姻し、長女、長男が生まれた。
夫は、市役所に職員として勤務し、定年退職した。
妻は、結婚以来会社勤務等をして共稼ぎをしてきたが、仕事をやめて専業主婦となった。
妻と夫は、本件土地上に本件建物を新築し、以後自宅として子供たち、夫の両親らと同居してきた。
夫は、ある女性と交際し、一緒に旅行等するようになり、妻が夫に女性との交際を止めるよう求めると妻に暴力を振るった。
妻は自宅を出て、長女が住むアパートに移り、夫と別居した。
妻は夫に対して、離婚、慰謝料として500万円、財産分与として合計約2377万円(内、年金分の財産分与については、夫が平均余命までに支給される退職共済年金の総額から妻が受給する老齢厚生年金の総額を控除した金額について新ホフマン係数により中間利息を控除した現在額の2分の1である約1023万円)、女性に対して慰謝料として500万円の支払を求める訴訟を提起した。
@裁判所は、妻と夫との婚姻は夫の不貞行為によって破綻したと認定し、夫に対して500万円の、女性に対して300万円の慰謝料の支払を命じた。
A退職共済年金の財産分与について
妻の老齢厚生年金も夫の退職共済年金も本件婚姻の継続中妻と夫が協力して生活してきたことによって残された財産的権利と解すべきであるから、離婚における清算の対象と認められるところ、夫の退職共済年金額からそのうちの加給年金に相当する額を控除すると256万6900円であり、さらに、上記256万6900円から妻の老齢厚生年金額を控除すると160万6600円になる。
そして、上記160万6600円が上記256万6900円について占める割合を算定すると、約62.6%である。
そこで、夫が離婚後支給される退職共済基金のうち60%を財産分与の対象とする。
ところで、妻は、夫が平均寿命まで生存したと仮定した場合に支給されると推定される退職共済年金の総額を基準に財産分与を行なうべきであると主張している。
たしかに、損害の公平な分担を目的とする不法行為制度においては、被害者の逸失利益につき一定の年数と金額を基礎とする推計を行なって損害を算定してるわけであるが、それは逸失利益が推定によってしか算定できない性質のものだからである。
これに対し、財産分与制度においては、実際に毎期において支給される年金額につきその都度分与を行うことが可能であり、かつ、それで足りるのであるから、妻が主張するような推計を行なう必要はなく、むしろ推計によることが不相当なことは明らかであるとした。
そして、夫に対して、(1)本件土地建物及び預貯金の2分の1である約894万円の支払い、(2)離婚判決が確定した日以降において、市職員共済組合から退職共済年金が支給されたときは、当該支給にかかる金額の10分の3に相当する金員を、当該支給がされた日が属する月の末日までに支払えと命じた。
なお、(1)の支払については、夫の資力に鑑みて、その履行について6ヶ月の猶予期間を認めて、支払期限を離婚判決が確定した日から6ヶ月以内とした。
慰謝料などの無料法律相談はこちらから
Amazonで慰謝料について調べる
|
|