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夫婦別に親権者と監護権者の指定
妻と夫は、婚姻し、両者間に長女、長男、二女が生まれた。
夫は、会社員であり、妻は、結婚と同時に退職して専業主婦となった。
妻は、切迫流産の危険から入院したため、長女と長男は、両方の実家に預けられ、休日は夫が自宅に引き取って世話をした。
長男の幼稚園への登園許否が激しくなり、妻と夫は激しい口論をし、その後長男に下痢、嘔吐などの症状が出たため、長男は精神科に通院して治療を受けた。
妻の運転の仕方が原因で、夫は妻を殴打し、妻は、この暴力をきっかけに、翌日子供たち3人を連れて実家に帰り、以後夫と別居した。
妻と子供たちは、両親、兄、兄の妻、兄の子供2人とともに、実家の二世帯用住宅で安定した生活を送っている。
夫と子供たちは、別居後月1回、夏休みは約2週間、冬休みは3日程面接交渉を行なっており、子供たちも夫との交流を楽しんでいる。
しかし、長女は夫にスキーに連れて行ってもらった際、無理にスキーをさせられたことなどから夫との面接交渉を嫌がるようになり、以後は面接交渉に参加していない。
妻は、離婚調停の申立をし、「妻と夫は離婚する。未成年者らの親権者指定については審判によって定める」旨の調停が成立し、その結果妻が未成年者3名の親権者を妻と指定する旨の審判申立をした。
夫の収入は1000万円を超えており、子供1人当たり月額3万円の養育費を送金している。
@原審は、以下のように述べて、長女及び長男の親権者は夫、監護者は妻と定め、二女の親権者は妻と定めた。
未成年者らの現状を考えると、夫が未成年者らを引き取った場合、現状以上の監護が可能であるかどうか疑問であるといわざるを得ない。
夫は父親として懸命な努力をするであろうことは考えられるが、未成年者らが過去において比較的神経質であったことを考えるならば、あえて問題が認められない現状を変えることは、未成年者らの福祉に反するものといわなければならない。
そうだとすれば、妻を未成年者らの監護者と指定し、監護教育させることが望ましいものということができる。
ただし、未成年者らの親権者については、未成年者らの年齢を考慮して年長である長女、長男の親権者は夫と定め、年少の二女の親権者は妻と定めるのが相当である。
すなわち、未成年者らの人格形成の観点から検討すると、特に年長の長女、長男と夫との従来の情緒的関係を見ると、夫の関与が不可欠であると考えられる。
夫には多少一方的で強引な傾向があるとしても、夫のこれまでに果たした父親としての未成年者らに対する責任感、愛情は他をもって代替できないものということができ、これを継続させることが未成年者らの福祉に沿うものということができる。
父母の離婚によって単独親権者となることはやむを得ないことであるが、未成年者らの健全な人格形成のためには父母が協力することが可能である場合には、協力関係が形成されることが望ましいことはいうまでもなく、幸いにも本件においては、妻と夫とは、未成年者らの養育全般について、その福祉に沿うように配慮し努力することができる能力を有するものと認められる。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判の一部を取消し、長女、長男の親権者をいずれも妻とした。
本件において、出生後2年弱で夫と別居することとなった二女はもちろん、長女及び長男についても、特に妻に監護権のみならず、親権を与えることが不適切な事情も見当たらない。
また、もとより、両親が離婚したとしても、未成年者の健全な人格形成のために父母の協力が十分可能であれば、監護権と親権とを父母に分属させることもそれはそれとして適切な解決方法である場合もあるとしても、先に認定したとおりの妻と夫の性格、両者の関係等に鑑みると、本件において双方の適切な協力が期待され得る状況にあるとは思われず、前記のとおり監護者として適当な妻から親権のみを切り離して夫に帰属させるのが適当であるとは認め難い。
そして、先に認定したとおり、夫と未成年者らとの関係は現在概ね良好であるので、親権者を妻と定め、夫は親権者とならなくても、夫としては、従前のような面接交渉を通じて、未成年者らに対し愛情をもって接し、良好な父子関係を保つことは可能であると考えられる。
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