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財産分与と不利益変更禁止
妻と夫は、結婚式を挙げ、婚姻届をなし、長男が生まれた。
夫は、結婚当時は重機運転手をしていたが、将来自分の店をもって飲食店を経営するのが希望で、妻が反対したにもかかわらず、勤めをやめ、修行を積んだ後、料理店を開店した。
妻と夫は、夫が開店した店の借入金等のことで不和となり、妻は、長男を連れて夫と別居した。
妻は、夫に対して、離婚、長男の親権者を妻とする、慰謝料として500万円、財産分与を求める訴訟を提起し、夫は、離婚、長男の親権者を夫とすることを求める反訴を提起した。
@一審は、離婚、長男の親権者を妻と指定し、夫は妻に対して土地1(現存価格200万円と評価)及びその上の建物1(現存価格150万円と評価)並びに250万円を財産分与することを命じた。
妻の慰謝料請求は棄却した。
A一審判決のうち、親権者の指定及び財産分与の部分について、夫が控訴した。
控訴審は、以下のように述べて、一審判決のうち財産分与の部分を変更し、夫は妻に対して800万円を支払うよう命じた。
清算の方法としては、土地3は、建物2の敷地として利用され、右建物は、現在、夫が営業のために使用していること、建物1の敷地である土地1は特有財産であり、妻及び長男は、現在、右建物に居住していないこと、土地1及び土地2には、夫が前記の店舗を開店するために姉から借り入れた借入金を担保する目的で同人のために所有権移転請求権仮登記が経由されていることなどに鑑みれば、清算の対象となる不動産はいずれも夫が取得することとしたうえで、夫から妻に対し金銭支払いによる分与を命じることが相当であるとした。
なお、建物1は100万円、土地2は550万円、土地3は1000万円の時価であると認定した。
B夫は、控訴審において、妻が財産分与の額について不服申立をしていないのに、控訴審が一審判決を夫に不利益に変更したのは、不利益変更禁止の原則に反して違法である等と主張して、上告した。
上告審は以下のように述べて、上告を棄却した。
人事訴訟手続法15条1項の規定により離婚の訴えにおいてする財産分与の申立てについては、裁判所は申立人の主張に拘束されることなく自らその正当と認めるところに従って分与の有無、その額及び方法を定めるべきものであって、裁判所が申立人の主張を超えて有利に分与の額等を民定しても民訴法186条の規定に反するものではない。
したがって、第一審判決が一定の分与の額等を定めたのに対し、申立人の相手方のみが控訴の申立てをした場合においても、控訴裁判所が第一審の定めた分与の額等が正当でないと認めたときは、第一審判決を変更して、控訴裁判所の正当とする額等を定めるべきものであり、この場合には、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はないと解するのが相当である。
人事訴訟手続法(廃止)第15条 夫婦ノ一方カ提起スル婚姻ノ取消又ハ離婚ノ訴ニ於テハ裁判所ハ申立ニ依リ子ノ監護ヲ為スヘキ者其他子ノ監護ニ付キ必要ナル事項ヲ定メ又ハ当事者ノ一方ヲシテ他ノ一方ニ対シ財産ノ分与ヲ為サシムルコトヲ得
2 前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ当事者ニ対シ子ノ引渡、金銭ノ支払、物ノ引渡其他ノ給付ヲ命スルコトヲ得
3 前2項ノ規定ニ依ル裁判ハ判決主文ニ掲ケテ之ヲ為スヘシ
4 前項ノ規定ハ家庭裁判所カ子ノ監護ヲ為スヘキ者ヲ変更シ其他子ノ監護ニ付キ相当ノ処分ヲ為スコトヲ妨ケス
5 前3項ノ規定ハ婚姻ノ取消又ハ離婚ノ訴ニ於テ裁判所カ父母ノ一方ヲ親権者ト定ムル場合ニ之ヲ準用ス
(第一審判決の取消し及び変更の範囲)
民事訴訟法第304条 第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。
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