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財産分与の退職金支給時の支払い
妻と夫は、婚姻し、長女、二女、三女が生まれた。
夫は、18歳の頃から保線区員として会社に勤務し、原審判時には助役の地位にあった。
妻は、パートに出たが、その頃から夫婦仲が悪くなり、妻と夫は、二女及び三女の親権者を夫として協議離婚した。
妻は、夫に対して、慰謝料及び財産分与金の支払いを求める審判の申立をした。
@原審は、以下のように述べて、夫が将来受領する退職金の財産分与として、退職金支給時に、約769万円の支払を命じた。
財産分与としては、離婚時に夫が任意に退職したと仮定して、その際に支給されるであろう退職金相当額から所得税等相当額を控除した残額の半分に相当する金額を基本として、婚姻以前の勤続年数(10年)とこの勤続10年の場合の退職金の支給率(15.0)をも考慮して定めた金額を、現実に退職金が支給された時に、支払うべきものとする。
A抗告審は、以下のように述べて、夫が妻に分与すべき退職金額を変更し、夫は、妻に対し、夫が会社から退職金を支給されたときは、612万円及びこれに対する同支給日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え、と命じた。
将来支給を受ける退職金であっても、その支給を受ける高度の蓋然性が認められるときには、これを財産分与の対象とすることができるものと解するのが相当である。
蓋然性とは、ある事柄が起こる確実性や、ある事柄が真実として認められる確実性の度合い。
そして、本件においては、夫の勤務する企業の規模等から照らして、夫が退職時に退職金の支給を受けることはほぼ確実であると考えられる。
ところで、退職金が仮に離婚前に支給されていたとしても、その全額が離婚時まで残存しているとは限らないし、夫が支給を受ける退職金について、妻の寄与分を夫と同一とみるもの妥当ではない。
したがって、本件においては、退職金についての妻の寄与率を4割とするのが相当である。
本件において財産分与として妻が取得すべき退職金の額は、次の算式のとおり612万円となる。
夫の月額基本給40万円×(離婚までの勤続年数33年の支給率54−婚姻以前の勤続年数10年の支給率15)−(所得税及び市町村民税概算合計額 30万円)×(妻の寄与率 0.4)=612万円
また、夫名義の住宅ローンについては、夫婦の協力によって住宅ローンの一部を返済したとしても、本件においては、当該住宅の価値は負債を上回るものではなく、住宅の価値は零であって、右返済の結果は積極資産として存在していない。
そうすると、清算すべき資産がないのであるから、返済した住宅ローンの一部を財産分与の対象とすることはできないといわざるをえない、と判示した。
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