最初にこちらのページにこられた方はトップページからどうぞ。
有責配偶者の離婚請求の要件
夫と妻は婚姻し、夫が南方で従軍した期間を除き平穏に同居生活をしていた。
夫妻は子が生まれなかったため、2人の子を養子縁組した。
その後、夫は、他の女性と同棲し、以後夫と妻は別居状態にある。
夫と女性との間には二子が生まれ、夫はこの二子を認知した。
夫は妻に対して離婚請求訴訟を提起したが、これは棄却された。
夫は、離婚調停申立てをしたが、不成立となったので、妻に対して本件離婚請求訴訟を提起した。
@一審、控訴審とも、有責配偶者である夫の請求を認容することは信義誠実の原則に照らし許されないとして、夫の請求を棄却した。
A上告審は、以下のとおり述べて、原判決を破棄し、高裁に差し戻した。
民法770条1項5号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において、当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては、有責配偶者の責任の態様・程度を考慮すべきであるが、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、例えば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等が斟酌されなければならず、更には、時の経過とともに、これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響しあって変容し、また、これらの諸事情のもつ社会的意味ないしは社会的評価も変化することを免れないから、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないのである。
そうであってみれば、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない。
夫と妻との婚姻については5号所定の事由があり、夫は有責配偶者というべきであるが、夫と妻との別居期間は、原審の口頭弁論の終結時まででも約36年に及び、同居期間や双方の年齢と対比するまでもなく相当の長期間であり、しかも、両者の間には未成熟の子がいないのであるから、本訴請求は、前示のような特段の事情がない限り、これを認容すべきものであるとした。
B差戻審では、妻は、4000万円の予備的財産分与の申立て、3000万円の慰謝料請求の予備的反訴を提起した。
差戻審では、離婚請求を認容することができない特段の事情は認められないとして、夫の離婚請求を認めた。
そして、夫に対して、月10万円ずつ平均余命の範囲内である10年分の離婚後の生活費にかかる財産分与として1000万円、慰謝料として1500万円の支払を命じた。
(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
慰謝料などの無料法律相談はこちらから
Amazonで慰謝料について調べる
|
|