最初にこちらのページにこられた方はトップページからどうぞ。
両親の対立が激しい場合の面接交渉
イギリス人の夫と日本人の妻は、婚姻し、長男が産まれ、長男はイギリス国籍を有している。
妻は、夫から何度も暴力を受けたこと原因で離婚を決意し、両親立会いのもとで未成年者を連れて、夫宅を出て、一時両親宅に身を寄せ、未成年者と生活している。
夫は、妻との離婚、未成年者の親権者を夫と定めることを内容とする離婚調停申立をし、未成年者との面接交渉を求める審判申立をなし、併せて本件審判前の保全処分の申立をした。
妻は日本の大学で助教授をしており、夫は日本の大学で専任講師をしていが、解雇され、イギリスに帰省中である。
@原審判は、以下のように述べて、夫の申立を却下した。
夫が未成年者との面接を強く希望していることが窺われるものの、上記のとおり父母が対立する状況のもとで、未成年者が現在別居している親と面接することは、その円滑な実施が望めず、かつ未成年者に心情的な混乱を与えるなど悪い影響を及ぼすおそれがあると考えられ、相当でなく、かつ本案の審判がなされる前に、上記のように事実上妻によって監護養育されている未成年者と夫が面接をしなければならない必要性があるとは認められない。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判を取消し、名古屋家裁に差し戻した。
別居中のため子の監護養育を行なっていない夫婦の一方に、子との面接を認めるか否かはあくまでも子の福祉に合致するか否かによって決定されるべきものである。
その場合、幼年期の子にとって大切なことは監護者との安定した関係を維持継続することであるから、子の両親間の対立、反目が激しく、その葛藤が子に反映してその精神的安定を害するときは、子と別居している親との面接は避けるべきであるといえるが、両親が子の親権をめぐって争うときはその対立、反目が激しいのが通常であるから、そのことのみを理由に直ちに面接交渉が許されないとすると、子につき先に監護を開始すればよいということにもなりかねず相当ではなく、右の場合でもなお子の福祉に合致した面接の可能性を探る工夫と努力を怠ってはならないというべきである。
本件においては、未成年者の両親である夫と妻が対立、反目していることが明らかであるが、前示のとおり夫も妻も教養を備えた教育者なのであるから、その面接交渉の回数、時間、場所、更に家庭裁判所の調査官の関与、助言などを考慮、工夫をすることによって、未成年者に対する両親間の感情的葛藤による影響を最小限に抑える余地があると考えられる。
慰謝料などの無料法律相談はこちらから
Amazonで慰謝料について調べる
|
|