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夫の定年後の妻の離婚請求
夫は、仕事熱心で、家庭内では無口であった。
妻は、専業主婦で、病気がちで、胃がんの手術を受け、その後体力が低下したこともあり、家事を十分にしなくなった。
長男は結婚して独立し、妻と夫は別の部屋で就寝し、食事も別に取るようになった。
夫は、定年退職し、年金生活に入った。
妻は左股関節臼蓋手術をして退院したが、その頃から妻は夫と会話をしなくなり、妻は2階で、夫は1階で別々に生活するようになった。
妻は、離婚調停申立てをなし、長女とともに自宅を出て、以後長女とともにアパートで生活している。
妻は夫に対して、民法770条1項5号に基づき離婚を求め、離婚慰謝料1000万円、財産分与として6201万円もしくは2922万円及び妻の死亡時まで毎月21万円、財産分与として自宅土地建物の夫の持分2分の1の分与とその移転登記、自宅建物からの退去及び明け渡しを請求した。
@一審は、7年の家庭内別居、妻が自宅を出て別居してから2年近くが経過しており、婚姻を継続し難い事情があるとして、妻の離婚請求を認容した。
そして、離婚慰謝料として200万円、清算的財産分与として、夫の財産のうち5分の2相当にあたる自宅土地建物の夫持分の各2分の1及び1694万円の分与、扶養的財産分与として、今後夫が受領する年金の妻受領額との差額4割相当額として、妻死亡時まで毎月16万円の支払、を命じた。
A控訴審は、以下のように述べて、一審判決を取消し、妻の離婚請求を棄却した。
妻と夫の長年にわたる婚姻生活にかかる前記の事情を見ても、夫には、妻の立場を思いやるという心遣いに欠ける面があったことは否定できないものの、格別に婚姻関係を破綻させるような行為があったわけではない。
妻と夫は現在別居状態にあるものの、これも妻が長女とともに自宅を出たために生じたものであり、妻が一方的に夫との同居生活を拒否しているというべきでものである。
なるほど、妻と夫は、平成9年10月11日以降、別居状態にあり、夫と長女の確執もあって、このまま推移すると、妻と夫の婚姻関係が破綻に至る可能性がないではない。
しかし、夫は、妻と夫の年齢や妻の身体的条件等をも考慮すると、離婚という道はさけるべきであるとして、妻との婚姻関係の継続を強く望んでいる。
また、長男も、前記のとおり、妻と夫の婚姻関係の継続を望んでいる。
そして、長女と夫の間には確執があって、長女の意向が妻の意向に強く関わっていることが窺われるが、長女に今後自立した人生を歩ませるという観点からも現状は好ましいものではない。
右のような諸事情を総合考慮すると、妻と夫は平成9年10月以降別居状態にあり、妻の離婚の意向が強いことを考慮しても、現段階で、妻と夫の婚姻関係が完全に破綻しているとまで認めるのは相当でないというべきである。
(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
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