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日本居住米国人夫の米国居住妻の離婚請求
米国籍の夫は、日本企業の香港駐在員として勤務していた際に、中国籍の妻と知り合い、在日米国大使館において婚姻手続をとった上、これを港区長に届出受理され夫婦となり、長男が生まれた。
夫と妻は、日本に転勤となり、西宮市で生活した。
妻は、長男を連れて上海の実家に帰省したまま戻らず、夫が長男だけを上海から日本に連れて帰り、以後別居状態となった。
妻は、上海から米国カリフォルニア州に転居したが、その後、トランジットのビザをとるため数日間夫と会ったのを最後に、1年に1回くらい米国から一方的に電話をかけてくるにとどまり、米国内での住居所は不明である。
夫は、妻に対して、離婚、長男の親権者を夫と定めることを求める本件訴訟を提起した。
なお、妻は公示送達による呼び出しを受けたが、出頭していない。
裁判所は、以下のように述べて、夫の請求を認容した。
@本件離婚請求の準拠法については、法例16条本文により、同法14条を準用することになるが、まず、夫は米国籍であり、妻は中国籍であるから、共通本国法は存在せず、また、夫は日本に定住者の資格で在留しており、その常居所は日本であるのに対し、妻は永住権を取得している米国のいずこかに住居所を有しているにすぎないから、夫婦の共通常居所地法も存在しない。
そこで、夫婦に最も密接な関係がある地の法律によるべきところ、前記のとおり、夫と妻は、日本で婚姻した後、夫の転勤に伴って香港から長男を伴って来日し、1992年6月から一時期日本で共同生活を始めたことがあり、夫と長男は、いずれも日本における定住者の在留資格を有し、在留期間を3年ごとに延長し、夫婦が別居状態となった以降も、引き続き日本で生活して現在に至っているから、こうした事実に照らすと、夫婦に最も密接な関係がある地の法律は日本法であり、本件離婚請求については日本法が準拠法になるというべきである。
A離婚に伴う未成年の子の親権の帰属は、父母の離婚によって発生する問題ではあるが、離婚を契機として生ずる親子間の法律関係に関する問題であるから、準拠法は法令21条によるべきである。
本件において、夫と妻の間の長男は、米国籍を有するが、米国は、実質法のみならず抵触法についても各州ごとに相違しており、統一的な準国際私法の規則も存在しない不統一法国であるから、法令28条3項にいう内国規則はなく、当事者に最も密接な関係ある地方の法律を当事者の本国法とすべきことになるが、子の国籍が米国である以上、子の本国法としては、米国内のいずれかの法秩序を選択せざるを得ない。
外国人登録原票上の国籍の属する国における住所又は居所は、長男及び夫とも、オハイオ州クリーブランド市であることが認められ、夫がオハイオ州で生まれ、同州の大学を卒業して来日してことは前示のとおりであるから、右事情に鑑みると、子の本国法としては、法令28条3項にいう当事者に最も密接な関係ある地方の法律としてオハイオ州法と選択し、長男の親権の帰属は、法令21条による子と父の共通本国法である同州法の定めるところによって決するのが相当である。
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