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離婚の慰謝料請求権の性質
夫と妻は、事実上の婚姻をして同棲し、婚姻届をした。
夫は、応召したが、夫の応召中も妻は、夫の母とともに田畑の耕作をした。
応召(おうしょう)とは、呼び出しに応じること。
特に、在郷軍人などが召集に応じて軍務につくこと。
妻は、農耕による過労のため健康を害し、農耕を休むようになったため、母から冷淡な態度をとられた。
夫は、復員したが、母は、妻を非難し、夫も母の言動に追随したため、妻は婚家を去った。
その後、女児が生まれた。
夫は、妻に対して、離婚請求訴訟を提起し、妻は、夫に対して離婚と慰謝料請求の反訴を提起した。
@一審は、夫と妻の離婚を認容したが、妻の夫に対する慰謝料請求は棄却した。
A控訴審は、夫と妻の夫婦関係が破綻した発端は母の妻に対する思いやりのない態度にあり、夫は、母を諌めその啓蒙に十分の努力を払わなかったとして、夫に対して7万円の慰謝料の支払を命じた。
B夫は、上告理由として現行民法においては離婚の場合に離婚をした者の一方は、相手方に対して財産分与の請求ができるから、離婚につき相手方に責任がある故をもって、直ちに慰謝料の請求をなし得るものではなく、その離婚原因となった相手方の行為が、特に身体、自由、名誉等の利益に対する重大な侵害であり、不法行為の成立する場合に、損害賠償の請求をなし得るにすぎないと主張した。
最高裁は、この上告理由に対して、以下のように述べて、夫の上告を棄却し、控訴判決を維持した。
離婚の場合に離婚した者の一方が相手方に対して有する財産分与請求権は、必ずしも相手方に離婚につき有責不法の行為のあったことを要件とするものではない。
しかるに、離婚の場合における慰謝料請求権は、相手方の有責不法な行為によって離婚するの止む無きに至ったことにつき、相手方に対して損害賠償を請求することを目的とするものであるから、財産分与請求権とはその本質を異にすると共に、必ずしも所論のように身体、自由、名誉を害された場合にのみに慰謝料を請求しえるものと限局して解釈しなければならないものではない。
されば、権利者は両請求権のいずれかを選択して行使することもできると解すべきである。
ただ両請求権は互いに密接な関係にあり財産分与の額及び方法を定めるには一切の事情を考慮することを要するのであるから、その事情の中には慰謝料支払義務の発生原因たる事情も当然に斟酌されるべきものであることは言うまでもない。
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