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不動産の財産分与と詐害行為
夫と妻は、婚姻し、3人の子がある。
夫は、26年間に渡り、会社に勤務してきた。
夫は、相続等により本件土地を取得し、本件土地上に本件建物を新築した(本件土地、本件建物を本件不動産という)。
夫は勤め先の会社が倒産することになり、債権者が自分に保証責任を追及してくる事態が避けられないと考え、本件不動産を妻に譲渡することにし、その手段として、離婚に伴う財産分与の方法をとることにした。
夫と妻は、協議離婚し、同日本件不動産について、財産分与を原因として妻に所有権移転登記手続(本件登記)をした。
会社は、破産申立をして、破産宣告を受けた。
Xは、グループ会社の訴外信用金庫からの借り入れについて保証しており、夫は、グループ会社のXに対する債務について連帯保証していた。
Xは、夫に対しては、求償金である約967万円の支払を求め、妻に対しては、財産分与の通謀虚偽表示ないし詐害行為を理由として、本件不動産についての本件登記の抹消登記手続き等を求めた。
@一審は、以下のように述べて、Xの妻に対する請求を棄却した。
協議離婚においては、当事者間に離婚の合意が真実成立していれば足りるのであって、合意が成立した理由がなんであるかを問わないのであるから、財産分与の必要性が協議離婚の原因となっているからといって、そのことだけで、本件届出が離婚意思の基づくものであったとの上記認定を左右することにはならないとし、協議離婚が真実なされている以上、これに伴ってなされた財産分与を通謀虚偽表示であると認める特段の事情もないとした。
また、財産分与が不相応に過大であり、財産分与に仮託してなされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるということはできないとして、詐害行為にはならないとした。
A控訴審は、以下のように述べて、一審判決の一部を変更した。
本件土地は、夫の特有財産であり、夫婦がその協力によって得た財産とはいえないが、本件建物は、実質上、夫婦の共同財産であるといえる。
夫が本件不動産を維持するに当たっての妻の貢献を考慮すると、財産分与としては、本件建物の共有持分の2分の1ないしはそれに相当する金員を分与するのが相当であって、本件財産分与のうちこれを上回る部分については、民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大であるといわざるを得ず、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる特段の事情がある。
(財産分与)
民法第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
取消しの目的物である本件不動産は、一筆の土地上にある一棟の建物であり、土地と建物は別個の不動産であるとしても、現に妻の住居として一体的に使用されていることからすれば、不可分のものと解すべきであるが、財産分与のうちの相当な部分については、本来、妻が潜在的な共有持分を有していたものといえるところ、本件財産分与全体を取消し、本件登記を全部抹消した場合は、上記潜在的な共有持分についても、債務者である夫の責任財産に加えられることになり、衡平を失するといわざると得ない。
したがって、本件財産分与のうち、不相当に過大な部分のみを取消し、価格による賠償を命じるのが相当であるとし、控訴審の口頭弁論終結時の本件土地の価格が835万円、本件建物の価格が約382万円とし、これから抵当権が設定されている住宅ローン残高を控除すると、本件不動産の価格は約614万円であるとした。
そして、本件における相当な財産分与額は、財産分与当時の本件建物の価格の2分の1に相当する約209万円であるから、妻はXに対して、これを上回る約405万円について価格賠償すべきであるとした。
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