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暴力による離婚の慰謝料請求
夫は船員で、長期間の乗船勤務があり、妻に対して家事をおろそかにせず、子供たちを厳しくしつけることを求めたが、妻がその期待に応える程度にいかなかったことから、注意していうことを聞かないと暴力で従わせる傾向があった。
夫と妻は、妻が行なっているボランティア活動のことでケンカとなり、夫は、妻を一本背負いで投げ飛ばした上、妻の顔面、頭部、腰等を何回も殴る、蹴るなどの暴力を振るった。
妻は、本件暴行により右鎖骨を骨折し、腰痛が発症し、本件暴行以後家を出て夫と別居した。
夫は、妻に対して離婚を求める訴訟を提起し、妻は、離婚、離婚慰謝料、財産分与、本件暴行による慰謝料を求める反訴を提起した。
@一審は、夫と妻の間には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして本訴、反訴の各離婚請求を認容した。
本件暴行による損害賠償については、入通院慰謝料50万円、後遺障害慰謝料300万円、後遺障害による逸失利益400万円の支払を認めた。
また本件暴行を除く離婚による慰謝料として350万円、財産分与として1800万円の支払を認めた。
A控訴審は、離婚による慰謝料については一審と同様に350万円を認め、入通院慰謝料100万円、後遺障害慰謝料500万円、後遺障害による逸失利益1113万5023円の支払を認めた。
また、夫婦間の暴行による損害額の算定について、一審と異なり、夫婦関係があること、保険制度が完備していないことにより、交通事故の損害算定に比して低額の損害額の算定をすべきではないと判示した。
財産分与については、夫が一級海技士の資格をもち、海上勤務が多かったことから多額の収入を得られたことが資産形成に大きく寄与しているとして、形成財産の約3割に当たる2300万円の支払を命じた。
(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
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