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フランス居住の親と日本居住の子の面接交渉
フランス国籍の夫と日本国籍の妻は、フランスで婚姻し、フランスと日本の二重国籍の長女が生まれた。
妻は、長女を連れて日本に帰国し、夫と別居した。
夫は、パリ地方裁判所に離婚訴訟を提起し、パリ控訴院の離婚、長女の親権者を妻とする判決が確定した。
パリ控訴院判決には要旨下記の条項があった。
両親の間において別段の合意がなされない限り、次に定める期間、子を父親のもとに同居させるものとする。
・フランスの学校のクリスマス休暇の前半の期間
・復活祭休暇中の10日間
・フランスの学校の夏休み中、偶数年については前半の期間、奇数年については後半の期間
子の旅費については、いずれも父親がこれを負担とすることを条件とする。
夫は、妻に対して、長女との面接交渉を求める審判の申立を京都家庭裁判所に
した。
@裁判所は、以下の内容の審判を下した。
妻は、夫に対し、日本国内において、夫が長女と面接交渉することを認めなければならない。
面接の日時、場所等の具体的方法については、その都度、夫と妻において、事前に協議して定める。
この場合長女の福祉を優先的に考慮すること。
夫と長女の面接交渉の方法として、長女の希望があれば宿泊を伴う面接も認めなければならない。
夫と長女の面接交渉に要する費用は、夫の負担とする。
夫が長女と日本国外(フランス)での面接交渉については、同時点において改めて当事者間において協議するものとする。
A国際裁判管轄及び準拠法
本件は、フランス人の父から、日本人の母に対して、フランス及び日本の二重国籍を持つ当事者間の長女との面接交渉を求める事案であるところ、同事件の国際的裁判管轄権に関しては、わが国には特別の規定も、確立した判例法の原則も存在しないが、子の福祉に着目する子の住所地国である日本の裁判所に専属的国際裁判管轄権を認めるのが相当である。
また、準拠法については、法令21条に従い母の本国法と同一である子の本国法の日本法が準拠法である。
Bフランス控訴院判決の承認の問題については、離婚等を内容とする訴訟裁判の部分と面接交渉等に関する非訟裁判の承認については、日本民事訴訟法200条の適用はないと解されるが、条理により、その承認の要件としては、外国の裁判がわが国の国際手続法上の裁判管轄権を有する国でなされたこと、それが公序良俗に反しないことの2つをもって足りると考える。
本件面接交渉申立審判事件については、日本国が専属的国際裁判管轄権を有するものと解されるので、上記フランス控訴院判決の面接交渉に関する判決事項を承認することはできず、当裁判所が同事項について独自の立場で判断をすることになる。
C面接交渉の具体的方法等について
長女は、まだ年齢的にも未熟で母との連帯感が強く、自己の意思で行動する社会性に欠けていること、外国語の会話能力がほとんどゼロに近いところから、自分の意図を父に理解してもらえないことに強い不安感を抱いているものと認められる。
そして、国内での父との数少ない面接交渉も、結果的には、その不安感を増幅させることになっているものと認められる。
従って、夫としては、国内での長女との面接交渉を通じて、長女の意図を理解し、同人の夫に対する信頼関係を徐々に高め、長女の成育と外国語能力の発達を待って、同人の自発的意思で渡仏を決心させる努力をすることが必要と考える。
また、夫においても、日本語の会話能力を身に付け、長女との意思疎通の幅を広げることが望まれる。
してみると、長女が渡仏して夫と面接交渉することについては、長女が小学校を卒業して中学校に進学し、ある程度自主的な判断能力をもち、外国の会話能力を身に付けた時点で、改めて当事者間で協議して、決定するのが相当であると判断する。
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