最初にこちらのページにこられた方はトップページからどうぞ。
監護者を祖父母に指定
夫と妻は、婚姻し、両者間に長女、二女が生まれた。
夫は、会社の産業医として勤務していた。
妻は、夫との夫婦喧嘩やその際に夫が自分や長女、二女に暴力を振るったこと等を原因として、長女、二女を連れて、実家に戻り妻の母と同居した。
夫と妻は、再度同居した。
これに伴い、夫妻が、長女、二女を連れて行こうとしたことから、長女、二女は、実家近くの久留米児童相談所に一時保護された。
長女、二女は、同相談所から逃げ出し、妻の母方に戻り、小学校に通学していた。
すると、夫妻が小学校から長女、二女を連れ出し、一緒に生活を始めた。
しかし、長女は、夫らの家を逃げ出し、妻の母とホテルにいるところを警察官に保護され、再度久留米児童相談所に一時保護された。
なお、二女は、夫妻宅に戻っている。
妻の母は、夫妻に対して、長女、二女の監護者を妻の母と指定し、長女、二女の引渡しを求める審判前の保全処分の申立をした。
@原審は、以下のように述べて、妻の母の申立を却下した。
家庭裁判所に対し子の監護者の指定の申立をすることができるのは、子の父と母であり、第三者にはその指定の申立権がないとも解されるところ、母は、長女らの祖母でもあって第三者であるから、本件の子の監護者の指定の申立権がないとはいえなくもない。
しかし、子の親族や事実上の監護者にも、民法766条の規定の趣旨を類推し、子の監護者の申立権を認める見解も存しないではないので、ここではこの問題は一応さておき審判前の保全処分の当否について検討することとするとしたが、本件では、本案の審判の申立が認容される蓋然性も保全の必要性もないとした。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
民法第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
2 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
3 前2項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
A抗告審は、以下のように述べて、原審判のうち長女に関する部分を取消し、長女の監護者を仮に母と定め、夫妻は母に対し、長女を仮に引き渡せと命じた。
本件の場合、度重なる両親の暴力を伴った紛争、長女に対して父親である夫による暴力や性的虐待が加えられている可能性が極めて高いこと等が現段階では否定できないのであるから、夫らの親権の行使が長女の福祉を害すると認めるべき蓋然性があるというべきである。
また、長女は、原審判後、暫くは一時保護先である久留米児童相談所で生活していたところ、まもなく同所から逃走し、現在のもとにかくまわれている状況であって、母と長女は、夫から連れ戻されるのを恐れて、現在学校にも登校することができない状況におかれているものである。
そうすると、上記のような長女の状況は同児の福祉に反することは明らかであって、現時点においては、同児の生活環境を早期に安定させる必要があるから、保全の緊急性もまたこれを認めることができる。
そして、同児の早急な生活の安定を図るためには、現在長女が望んでいる母による監護につき法的根拠を付与することが必要であると解される。
慰謝料などの無料法律相談はこちらから
Amazonで慰謝料について調べる
|
|