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日本居住の韓国人夫婦の子の親権者の指定
妻と夫は、いずれも大韓民国の国籍を有し日本に居住し、2人の子がいる。
妻は、夫から不当な待遇を受け、両者間の婚姻関係は破綻し、準拠法である大韓民法840条1項6号に定める「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」にあたるとして、夫に対して離婚、子の親権者を妻と定めることを求める本件訴訟を提起した。
@一審は、妻の離婚請求を認容したが、子の親権者については、以下のように述べて、親権者を指定しなかった。
大韓民国民法は、父母の離婚に伴う子の親権者に関してはすでに法定されているのみならず、同法は、その第837条において子の養育に関するものであれば、法院(裁判所)は当事者の請求により必要事項を定めることができると規定しているが、親権者指定に関しては、裁判所に対し離婚の判決においてこれを指定する権限を付与していないため、親権者を指定することはできないので、右言渡しはしない。
A控訴審は、妻の離婚請求を認容し、子の親権者についても以下のように述べて、妻の親権者と指定した。
離婚の場合の未成年者の子の親権者の指定は、離婚を契機として生ずる親子関係にほかならないから、法令第20条によるが、同条の定めるとことによると、親子間の法律関係は父の本国法によるとされるところ、大韓民国渉外私法第22条によると、「親子間の法律関係は父の本国法による」とあり、法令第29条による反致条項を適用する余地はない。
そうすると、本件離婚にともなう未成年者の子の親権者の指定の準拠実質法は、大韓民国民法にほかならないことになる。
大韓民国民法によると、離婚にともなう未成年者の子の親権者の指定に関しては、法律上自立的の父と定めることになっており、母は親権者に指定される余地はなく、本件の場合、いかに外国人間の離婚の問題とはいえ、父の本国法である大韓民国法に準拠すると、わが国ではすでに廃止された旧民法時代の親子関係が復活することになり、子の福祉についてみても、扶養能力のない父に子を扶養する親権者としての地位を認め、現在実際に扶養能力を示している母からその地位を奪うことになり、法令第30条にいわゆる公序良俗に反するものということができる。
そこで、わが国の民法819条第2項を適用し、妻を親権者と定める。
(離婚又は認知の場合の親権者)
民法第819条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
B上告審も、以下のように述べて、控訴審判決を支持し、上告を棄却した。
本件離婚にともなう未成年者の子の親権者の指定に関する準拠法である大韓民国民法909条によると、右指定に関しては法律上自動的に父に定まっており、母が親権者に指定される余地はないところ、本件の場合、大韓民国民法の右規定に準拠するときは、扶養能力のない父である夫に子を扶養する親権者としての地位を奪うことになって、親権者の指定は子の福祉を中心に考慮決定すべきものとするわが国の社会通念に反する結果をきたし、ひいてはわが国の公の秩序または善良の風俗に反するものと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。
したがって、本件の場合、法令30条をにより、父の本国法である大韓民国民法を適用せず、わが民法819条2項を適用して、妻を親権者と定めた原審の判断はもとより正当である。
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