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別居中の子の引渡しの人身保護請求
妻と夫は、婚姻し、長女が生まれた。
妻は、長女を連れて当時夫婦が居住していた札幌市のマンションを出て、夫と別居し、苫小牧市に住む親戚方に身を寄せた後、実母の住む札幌市のアパートに移り、同アパートで生活している。
夫は、妻の親戚方を訪れて、長女を連れ戻し、以後夫の両親の自宅において、同居しながら、長女を監護養育している。
妻は、人身保護法に基づき、夫、夫の父と母に対して子供の釈放、妻への引渡しを求めた。
@一審は、以下のように述べて、妻の請求を認容した。
妻は、出産後本件拘束に至るまでの約3ヶ月間、母として被拘束者を大過なく監護養育したのであって、被拘束者に対する母としての愛情を持っていると考えられ、今後も、実母の援助を期待しうる状況で被拘束者を監護養育する意欲と能力を有しているということができる。
一方、本件拘束中、被拘束者は夫らの監護養育の下で順調に発育したのであって、夫らも父、祖父母としての愛情を持っていると考えられる。
しかし、被拘束者は、身体的発達のために細やかな面倒を受ける必要があるばかりでなく、母親から抱かれたり・あやされたり等その手により直接こまごまとした面倒を受けそのスキンシップにより安定した性格・人間的情緒の発達が始まると考えられる1歳に満たない幼児であるから、被拘束者の人間としての幸福を考えると、被拘束者にとっては母親の下で監護養育されるのが最も自然であり幸福であるというべきである。
A上告審は、以下のように述べて、原判決を取消し、札幌地裁に差し戻した。
夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡しを請求する場合には、夫婦のいずれかに監護させるのが子の幸福に適するかを主眼として子に対する拘束状態の当不当を定め、請求の当否を決すべきところ、この場合において、夫婦の他方による乳児の監護・拘束が権限なしにされていることが顕著であるというためには、その監護・拘束が子の幸福に反することが明白であることを要するものであって、この理は、子が出生後年未満の乳児であるとの一事によって異なるものではない。
これを本件についてみるのに、原審の確定した事実関係によれば、被拘束者に対する監護能力という点では、夫らと妻との間に差異があるとは一概に断じ難く、双方の経済状態及び居住環境という点では、夫らのそれがむしろ優れているといえるのであって、本件記録に徴する限り、被拘束者が生後1年未満の乳児であることを考慮入れてもなお、夫らによる被拘束者の監護・拘束がその幸福に反することが明白であるとまでは到底いえない。
B差戻し審は、妻の請求を棄却した。
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