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不貞の慰謝料請求権の消滅時効の起算点
妻と夫は婚姻し、長男が生まれた。
女性は、勤務先の証券会社で同僚であった夫と知り合い、男女関係を結んだ。
夫は、自宅を出て、女性と暮らし、証券会社を退社し、夫の父の住職の地位を受継ぎ、女性と同居した。
女性は夫との間に女児を生み、夫は胎児認知した。
妻は、夫に対して、夫婦関係調整の調停を申し立てたが、不調となった。
夫は、妻に対して離婚訴訟を提起し、離婚を認める判決がなされ、妻は控訴、上告したが離婚判決が確定した。
妻は、女性に対して、2000万円の慰謝料等を求める本件訴訟を提起した。
@一審は、以下のように述べて、妻の請求を棄却した。
まず、夫と妻との婚姻関係は、女性が女児を出産し、妻がこれを知った昭和57年には、破綻したと認められるから、少なくとも昭和57年以降の女性と夫との関係については不法行為が成立しない。
また、女性の消滅時効の抗弁について、妻としての権利の侵害としては、右侵害行為がされている間は、日々発生するものであるから、妻は、夫との夫婦関係が破綻する前の女性の不法行為については、それを十分認識していたのであり、右不法行為に基づく損害賠償を求めることもできるから、破綻までの不法行為に基づく損害賠償は各行為時から消滅時効が進行する。
本件訴訟が提起された平成9年5月11日から遡る3年前には、前記認定のとおり、すでに妻と夫の婚姻関係は完全に破綻していたものと認められるから、女性の不法行為に基づく妻の慰謝料の損害賠償請求権は、本訴提起の段階で既に時効期間が経過していたと認められ、右時効を被告が援用する以上、原告の請求権は消滅したものといえる。
A控訴審は、以下のように述べて、一審判決を一部取消し、女性に対して200万円の慰謝料等の支払を命じた。
妻の本件慰謝料請求は、単に女性と夫との肉体関係ないし同棲の違法を理由とするものではなく、女性と夫との肉体関係ないし同棲の継続によって、最終的に夫との離婚をやむなくされるに至ったことにより被った慰謝料の支払をも求めるものであるところ、前示の事実関係によれば、女性と夫との肉体関係ないし同棲の継続により右離婚をやむなくされ、最終的に離婚判決が確定したのであるから、離婚に至らしめた女性の右行為が妻に対する不法行為をなるものと解すべきである。
夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同棲により第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当であり、本件においても、妻は、夫が昭和47年に女性と同棲した事実をその後数年のうちには知ったものと推認される。
しかし、妻の本件慰謝料請求は、単に女性と夫との肉体関係ないし同棲の継続により最終的に夫との離婚をやむなくされるに至ったことをも女性の不法行為として主張していることは前示のとおりであるところ、このように第三者の不法行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由として損害の賠償を求める場合、右損害は離婚が成立して初めて評価されるものであるから、第三者との肉体関係ないし同棲の継続等を理由として離婚を命ずる判決が確定するなど、離婚が成立したときに初めて、離婚に至らせた第三者の行為が不法行為であることを知り、かつ、損害の発生を確実に知ったこととなるものと解するのが相当である。
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