離婚の財産分与と詐害行為 |
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夫と妻は、婚姻し、二男三女をもうけた。 夫は、本件土地(1)上の夫の父所有の建物でクリーニング業を始めたが、ある女性と交際して、女性との間に子供が生まれた。 夫は、クリーニング業は妻に任せ、自分は不動産業、金融業を始めるようになった。 夫は、信用組合と信用組合取引契約を結び、手形貸付、手形割引等を受けていたが、手形の不渡りを出して倒産した。 信用組合は、夫に対して約1億2442万円の手形元本債権を有している。 妻は夫と協議の結果、妻が家業であるクリーニング業を続けることによって子供らの面倒をみることにし、夫は、本件土地(1)及び(2)(併せて本件土地)を慰謝料を含めた財産分与として妻に譲渡することとし、協議離婚し、離婚に際して本件土地について代物弁済を登記原因として妻に移転登記がなされた。 なお、本件土地(1)は、クリーニング業の利益で購入し、所有権移転登記手続をなし、本件土地(2)も同じくクリーニング業の利益で取得した。 信用組合は、夫に対して、本件土地の代物弁済契約等は詐害行為であるとして、その取消等を求める本件訴訟を提起した。
@一審は、本件土地を離婚に伴う財産分与及び慰謝料の支払のために妻に譲渡した行為は詐害行為とはならないとして、信用組合の請求を棄却した。 A控訴審も一審判決を維持した。 B上告審も以下のように述べて、上告を棄却した。 離婚における財産分与は、夫婦が婚姻中に有していた実質上の共同財産を清算分配するとともに、離婚後における相手方の生活の維持に資することにあるが、分与者の有責行為によって離婚をやむなくされたことに対する精神的損害を賠償するための給付の要素をも含めて分与することを妨げられないものというべきであるところ、財産分与の額及び方法を定めるについては、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮すべきであることは民法768条3項の規定上明らかであり、このことは、裁判上の財産分与であると協議上のそれであるとによって、なんら異なる趣旨のものではないと解される。 (財産分与) 民法第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。 2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。 3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。 したがって、分与者が、離婚の際既に債務超過の状態にあることあるいはある財産を分与すれば無資力になるということも考慮すべき右事情のひとつにほかならず、分与者が負担する債務額及びそれが共同財産の形成にどの程度寄与しているかどうかも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解するべきであるから、分与者が債務超過であるという一事によって、相手方に対する財産分与を全て否定するのは相当でなく、相手方は、右のような場合であってもなお、相当な財産分与を受けることを妨げられないものと解すべきである。 そうであるとするならば、分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消しの対象となり得ないものと解するのが相当である。 本件土地は妻の経営するクリーニング店の利益から購入したものであり、その土地取得についての妻の寄与は、夫のそれに比して大であって、もともと妻は実質的に夫より大きな共有持分権を本件土地について有しているものといえること、妻と夫との離婚原因は同人の不貞行為に基因するものであること、妻にとっては本件土地は従来から生活の基盤となってきたものであり、妻及び子供らはこれを生活の基礎としなければ今後の生活設計の見通しが立て難いこと、その他離婚期間、妻の年齢などの諸般の事情を考慮するとき、本件土地が夫にとって実質的に唯一の不動産に近いものであることを斟酌してもなお、妻に対する本件土地の譲渡が離婚に伴う慰謝料を含めた財産分与として相当なものということができるから、これを詐害行為にあたるとすることができないとした原審の判断は、正当として是認することができる。 慰謝料などの無料法律相談はこちらから Amazonで慰謝料について調べる |
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