帳簿閲覧請求の対象となる会計帳簿・書類の意義

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帳簿閲覧請求の対象となる会計帳簿・書類の意義

横浜地判平成3年4月19日(文書の閲覧等請求事件)
判時1397号114頁、判夕768号227頁、金判892号23頁

<事実の概要>

Xは、Y株式会社の発行済株式総数の10分の1以上の株式を有する株主である。

Xは、Y社に対し、昭和63年7月12日から同年8月12日にかけて4度にわたり、それぞれの理由を付した書面をもって、以下の文書の閲覧請求を行なった。

その文書とは、昭和58年8月21日から平成2年8月20日までにわたる6期の、@決算報告書、A法人税確定申告書及び明細表とその作成資料のすべて、B総勘定元帳、C契約書綴り、D当座預金照会表、E手形帳・小切手帳の控え及びこれらの元帳、F会計用伝票全部、G普通預金通帳のすべて、H現金出納帳、I売掛金に関する領収書・請求書全部、Kその他以上に関連する一切の資料である。

これに対してY社は、代表者が終日不在であること、及びXの各閲覧請求が前商法293条の7第1号に該当することを理由に、当該閲覧請求を拒絶した

そこでXは、次の事実を調査するため、以上列挙した文書の閲覧謄写請求を行なった。

すなわち、決算期直前における多数の振替伝票による支出金項目変更の経理操作の疑い、受取手形・売掛金等の回収不能債権を資産として計上している疑い、未払工事代金が未払金に計上されなくなる等の会計処理上の疑問、Y社が使用する自動車リース代金の適正さに対する疑問、Y社の前代表者Aの個人諸費用等を会社の経理から支出している疑い、そしてY社が多額の損失を出している株取引の適切さ、妥当さに対する疑問等である。



<判決理由>請求一部認容。

「Xは、商法293条の6の規定に基づき第25期から第31期までの決算報告書・・・閲覧謄写を求めるが、決算報告書は商法282条の規定に基づく閲覧等請求の対象文書であり、同法293条の6は少数株主の閲覧謄写請求権の対象を「会計の帳簿及書類」に限定しているところ、ここでいう「会計の帳簿」とは、商法32条及び企業会計原則に基づけば、通常会計学上の仕訳帳、元帳及び補助簿を意味し、「会計の書類」とは、会計帳簿作成い当り直接の資料となった書類、その他会計帳簿を実質的に補充する書類を意味するものと解するのが相当である。

なお、伝票については、これを仕訳帳に代用する場合には「会計の帳簿」と同視すべきであるが、それ以外の場合には、会計帳簿作成の資料となった書類として「会計の書類」に該当するものと解する。

・・・これを本件について検討すると、本件文書中、総勘定元帳・・・、手形小切手元帳・・・現金出納帳・・・、売掛金に対する売上明細補助簿・・・が、商法293条の6所定の「会計の帳簿」に該当することは明らかである。

また、本件文書中の会計用伝票・・・について検討すると、本件全証拠によっても、Y社が会計処理において伝票を仕訳帳に代用していることを認めることはできないから、本件においては、会計用伝票は「会計の書類」に該当するというべきである。」

「次に、契約書綴り・・・、当座預金照会表・・・、手形帳・小切手帳の控え・・・、普通預金通帳・・・のすべて、売掛金に関する請求書控・納品書控・領収書控・・・、経費・固定資産税に関する領収書・請求書・・・等が「会計の書類」に該当するか否かについて検討する。

・・・Y社の会計処理方法は、@原資伝票を作成してAの決済を受けた後、一旦これをコンピューターに入力し、A支払期日に買掛金等最終的に確定した後、右確定金額をもとに修正を加えて仮決算を行い、Bこれに基づき総勘定元帳を作成するものであることが認められる。

右事実によれば、Y社の会計処理において直接会計帳簿の資料となるのは原始伝票のみであって、それ以外の・・・各書面(契約書綴り以下、経費・固定資産税に関する領収書・請求書まで列挙された各書面)はあくまで伝票作成のための資料に過ぎないことが推認され、他に右各書面がY社の会計処理において直接会計帳簿作成の資料となることを認めるに足りる証拠はない。」

「また、法人税確定申告書は、会計の帳簿を材料として作成される書類であって、会計の帳簿作成の資料となる余地はない。」

「そうすると、本件文書中、その性格上、商法293条の6所定の「会計の帳簿及書類」に該当するものは、総勘定元帳、現金出納帳、手形小切手元帳、売掛金に関する売上明細補助簿及び会計用伝票・・・のみであり、その余の文書はこれに該当しない。」

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外国向為替手形の取立て・再買取の拒絶と買取銀行の権利義務
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