主催旅行契約と旅行業者の責任

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主催旅行契約と旅行業者の責任

東京地判平成元年6月20日(損害賠償請求事件)
判時1341号20頁、判夕730号171頁、金判842号6頁

<事実の概要>

旅行業者であるY株式会社は、「台湾全周5日間」と題した台湾観光を目的とする旅行を企画・募集し、これに応募したX1〜X6との間で、Y社の定める旅行業約款に基づいて本件旅行についての主催旅行契約を締結した。

本件旅行の途中、台湾において、X1〜X6を含む本件旅行の参加者が乗車したバスが、運転手の過失により道路から谷底に転落した。

この事故により8名が死亡し、X1らを含む8名が負傷した。

X1らはYに対し事故による損害の賠償を請求した

X1らは、旅客運送契約の債務不履行、主催旅行契約上の安全確保義務違反、主催旅行契約上の手配及び旅程管理上の義務違反、添乗員の過失によるYの安全確保義務違反などによる損害賠償責任を主張した。



<判決理由>請求棄却。

「本件約款は・・・標準旅行業約款・・・と同一内容のものである・・・ところ、標準約款の制定過程に照らすと、同約款は、主催旅行契約につき、旅行業者は、自ら旅行サービスを提供するものではなく、旅行サービスの提供について手配をする地位にある契約とするのが妥当であり、旅行サービスの瑕疵により旅行者の生命・身体・財産に生じた損害については、旅行業者が契約責任を負う場合を限定する反面、一定の限度において旅行業者の有無にかかわらずに補償されるのが妥当であるとし、そのための保険を開発すべきであるとの基本的考えに立って制定されたものであり、この考えが標準的約款3条、21条、22条として規定されるに至ったものである。」

「主催旅行契約における旅行サービス・・・のすべてを一旅行業者が旅行者に提供することは実際上不可能であるから、旅行業者は旅行サービスの全部又は一部を運送機関、宿泊機関等の専門業者の提供するところに依存せざるを得ないこと、旅行業者は、実際に旅行サービスを提供する運送機関、宿泊機関等の専門業者に対して対しては、個々の契約を通じて旅行者に提供させるサービスの内容を間接的に支配するほかはないこと、特に当該主催旅行の目的地が海外である場合には、これらの専門業者が外国政府の統治下にあるため、旅行者に提供させるサービスに関する支配は一層制約を受けることとなること等を考慮すると、前示の標準約款制定の基本的考え及びこれに基づく前記諸規定は、少なくとも海外を目的地とする主催旅行契約に関する限り、不合理であるとはいえない」。

「標準約款の前記3条及び21条の規定に照らすと、旅行業者は、旅行者と主催旅行契約を締結してことのみによって、旅行者に対し、主催旅行の運送サービスにつき、旅客運送人たる契約上の地位に立たない」。

「(1)旅行は、旅行者の生命、身体、財産等の安全が図られうる条件のもとで実施されるべきものであるが、・・・旅行者が自然災害、病気、犯罪者若しくは交通事故等に遭遇する危険を包含しており、特に海外旅行の場合には、・・・旅行に伴う危険は国内旅行の場合に比し一層高度なものとなることもあるのみならず、いったん事故があったときには、被害者や救護又は法的救済を受けることは困難若しくは事実上不可能であることもありうる等の特殊性があること、(2)主催旅行契約においては、旅行の目的地及び日程・・・等の主催旅行契約の内容・・・は旅行業者が一方的に定めて旅行者に提供し、旅行代金も旅行会社がその報酬を含めて一方的に定めて旅行者に提供し、旅行代金も旅行業者がその報酬を含めて一方的に定めるものであり、旅行者は・・・提供された契約内容・旅行代金の額を受け入れるか否かの自由しかないのが通常であること、(3)・・・旅行者は旅行業者が・・・専門的知識・経験に基づいて企画、実施する主催旅行の安全性を信頼し、主催旅行契約を締結するものであるといえること等を考えると、旅行業者は、主催旅行契約の相手方である旅行者に対し、主催旅行契約上の不随義務として、旅行者の生命、身体、財産等の安全を確保するため、旅行目的地、旅行日程・・・等に関し、あらかじめ十分に調査・検討し、専門業者としての合理的な判断をし、また、その契約内容の実施に関し、遭遇する危険を排除すべく合理的な措置をとるべき注意義務」がある。

旅行業者の損害賠償責任について定める本件約款21条は、旅行業者に上記「注意義務のあることを示すと共に、旅行業者の旅行サービス提供機関に対する統制には前記のように制約があること等を考慮し、旅行業者の責任の範囲を限定した規定と解するのが相当であり、当該主催旅行の目的地が外国である場合には、日本国内における平均水準以上の旅行サービスと同等又はこれを上回る旅行サービス提供機関についての調査にも制約がありうるから、特に契約上その内容が明記されていない限り、旅行業者としては、日本国内において可能な調査・・・資料の収集をし、これらを検討したうえで、その外国における平均水準以上の旅行サービスを旅行者が享受できるような旅行サービス提供機関を選択し、これと旅行サービス提供契約が締結されるよう図るべきであり、更には、旅行の目的地及び日程、移動手段等の選択に特有の危険・・・をあらかじめ除去する手段を講じ・・・る等の合理的な措置を採るべき義務があることを定めた規定と解すべきである。

したがって、海外旅行において旅行者が移動手段である運送機関の事故に基づき損害を被った場合において、旅行業者が右の各義務を尽くしたとすればこれを回避しえたといえるときには、右義務を懈怠した旅行業者は、主催旅行契約上の義務の履行に当り過失があったものというべきであるから、同条2項但書に基づき同条1項本文所定の損害賠償責任を免れないものというべきである。」

本件では、Yの旅行行程設定に関する注意義務違反、運送サービス提供機関の選定に関する注意義務違反はない

添乗員の安全確保義務違反もない

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