売上予測等の提供に関するフランチャイザーの責任

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売上予測等の提供に関するフランチャイザーの責任

東京高判平成11年10月28日(損害賠償請求控訴事件)
判時1704号65頁、判夕1023号203頁

<事実の概要>

Yはフランチャイズ事業を展開する株式会社である。

Xは某メーカー企業の元開発部長で、同社を希望退職後、約2年間にわたり友人と事業を行なった経験を有する者であるが、独立して事業を経営する機会を窺っていたところ、Yの運営するフランチャイズの説明を受け、Yのフランチャイザーとして開業することを希望するに至った。

平成6年11月、XとYの担当者は店舗候補地をいくつか視察した上、A地にある賃貸物件が適当であるとして開業準備に着手した。

Yは売上見込等を付した新規出店事業計画を作成し、Xはこれを資料として国民金融公庫に融資の申込をしたが、立地条件が悪いこと、Xが事業の素人であること等を理由として、融資を拒絶された。

このためXの開業は一旦頓挫したが、リース会社であるB株式会社からから資金を調達できることとなり、平成7年2月、前記賃貸物件を賃借し、Yとの間で加盟店契約(以下、「本件契約」)を締結した。

同年3月、Xは本件契約に基づきクリーニング店(以下、「A店」)を開店したが、開店当初から売上はYの示した損益分岐点におよそ到達しなかった。

Yは人員を派遣して業務改善を指導する等したが、業績は改善せず、同年10月、Xは本件契約を解除する旨の意思表示をし、A店は同年12月に閉店した。

以上のような事実関係のもと、Xは、売上予測等を示す場合、Yには適正な情報を提供すべき信義則上の保護義務があるにもかかわらずこれを怠ったとして、Yに対し損害賠償を請求した

原審は、売上等の予測には様々な手法が考えられ、架空の数値に基づくものであるとか、推計の過程に明らかに不合理な点があるというのでない限りは、相手方の判断を誤らせるよな適正を欠く予測を呈示したものということはできず、本件における売上等の予測は、客観的な統計資料に基づく人口動態やクリーニングに関する千葉県民の消費動向を根拠に算出された需要予測に裏付けられたものであり、特に適正を欠くところはなく、また予測が現実に達成できるか否かの判断はフランチャイズ契約を締結して加盟店になろうとするXが自己の責任において行なうべきであるとして、Xの請求を退けた。

これに対し、Xが控訴したのが本件である。



<判決理由>原判決変更、一部認容。

「一般に、フランチャイズ・システムにおいては、店舗経営の知識や経験に乏しく資金力も十分でない者がフランチャイザーとなることが多く、専門的知識を有するフランチャイザーがこうしたフランチャイジーを指導、援助することが予定されているのであり、フランチャイザーはフランチャイジーの指導、援助に当り、客観的かつ的確な情報を提供すべき信義則上の保護義務を負っているものというべきである。」

「そこで、Yの売上試算、予測について検討するに、Yは、競合店について、A店の周辺1キロの第1次商圏内に11店舗あるものとした(実際には12店舗あった。)が、A店が他の多くの取次店と異なり、納期については短時間仕上げが可能なこと、誤配、紛失等のトラブルが少ないことを特徴としているので、右取次店は実質的に競合店ではないとして、実質上の競合店数を数店舗(以内)として、同商圏内の1万3436世帯のうちの2100世帯を固定客にすることができると判断したものであるが、一般的に取次店とユニット店とで納期について特段の差があるものとは認められず、また、取次店とユニット店とでYの主張するようなトラブルの多寡(取次店に対する客の不安)があると認めざるを得ない。

そうすると、Yのした売上試算、予測は、競合店についての判断を誤ってした的確な情報ではなかったものと認められ」、・・・「Yによる不正確な情報の提供とXによるA店の開業及びその経営破綻との間には相当因果関係があると認められるから、Yは、前記信義則上の保護義務違反により、Xが本件契約の締結及びA店の開業及びA店の開業により被った損害を賠償する責任を負うというべきである。」

もっとも「前示のとおり、フランチャイズ・システムにおいては、専門的知識を有するフランチャイザーがフランチャイジーを指導、援助することが予定され、客観的かつ的確な情報を提供すべき信義則上の保護義務を負っているとはいえ、他方において、フランチャイジーも、単なる末端消費者とは異なり、自己の経営責任の下に事業による利潤の追求を企図する以上、フランチャイザーから提供された情報を検討、吟味した上、最終的には自己の判断と責任においてフランチャイズ・システム加入を決すべきものである。

前記認定事実によれば、Xとしても、Yが提供したし料等を検討、吟味することが十分に可能であったといわなければならず、・・・本件にあらわれた諸般の事情を総合考慮すると、Yの前記義務違反による損害賠償を定めるに当っては、公平の原則に照らし、Xに生じた前記損害について7割の過失相殺をするのが相当である。」

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支払人として記載された者以外の者のなした為替手形の引受け
外国向為替手形の取立て・再買取の拒絶と買取銀行の権利義務
盗難預金小切手の支払
被仕向銀行の行為による損害と仕向銀行の振込依頼人に対する責任
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