外観上良好に船積された旨の船荷証券の記載

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外観上良好に船積された旨の船荷証券の記載

最判昭和48年4月19日(損害賠償請求事件)
民集27巻3号527頁、判時704号86頁、判夕295号255頁

<事実の概要>

荷送人Aは、1959年9月Y株式会社に対し、タイル隙箱413個ほか運送品についてジェノア港よりリベリア国モンロビア港まで海上運送を委託し、Yはこれを引き受け、同月2日同運送品をその運航にかかる汽船に積み込んだが、その際、Aの請求により、「運送品を外観上良好な状態において船積した」(shipped on board the goods in apparent good order and condition)旨記載した船荷証券を発行した。

同証券は裏書されて本件運送品の引渡当時Bが所持していた。

前記汽船が1959年10月22日にモンロビア港に入港して荷卸し、Bは翌23日にYに対して損害の通知をし、26日にロイズ代理店の検査人に依頼して荷卸の後検査した結果、本件運送品のうちタイルの95%が破損して使用に堪えなくなっていた。

Bとの間で貨物保険契約を締結していたX保険会社はBに保険金を支払った上、保険代位(商法662条)によりYに対する運送契約上の損害賠償請求権を取得したとして、本訴を提訴した

なお、運送契約に関する準拠法は合意により日本法とされている。

原審判決は、Xの請求を認容した。

Yは上告した。



<判決理由>破棄差戻し。

1 「国際海上物品運送法12条1項の規定によれば、荷受人または船荷証券所持人(以下単に「荷受人等」という。)が運送品に損傷があった場合に運送人に対して発する通知書には、「損傷の概況」を記載しなければならないこととなっている。

これは、荷受人等は以上があるときは通知書に基づき運送人をして証拠の保全その他善後策を講じさせる趣旨に出たものであるから、右通知書には、必ず、荷受人等が運送品の点検をした結果知り得たその損傷の種類および程度の概略が「損傷の概況」として記載されなければならないものと解するを相当とする。

・・・原審の認定するところによれば、本件通知書・・・には、本件運送品の損傷につきその概況というほどの具体的記載はなく・・・、ただその際予定されていたロイド代理店の損害検査に立会いを求める旨の記載があるにすぎない、というのである。

したがって、本件通知書は「損傷の概況」の記載を欠くものというべく、原審は他に同条1項所定の通知があったことを認定してないのであるから、その通知がなかったものとして、同条2項の規定により本件タイルを含む本件運送品は損傷がなくBに引き渡されたものと推定すべきである。

右と見解を異にする原審の判断には、誤って同条を解釈した違法があるものといわなければならない。」

2 「船荷証券上の「運送品を外観上良好な状態で船積した」旨の記載は、国際海上物品運送法7条1項3号所定の記載であって、運送品が包装ないし荷造りされていて運送品自体を外部から見ることができない場合においては、右包装ないし荷造りが外観上異常がなく、かつ、運送品を目的地に運送するに十分な状態であるとともに、運送品そのものが相当な注意をもってしても外部からはなんらの異常も感知できない状態であることを運送人が認めたものではあるが、なんらの異常も感知できない状態であることを運送人が認めたものではあるが、進んでそれ以上の運送人において相当の注意をしても外部から感知できない運送品そのものの状態に異常がないことまでも承認するものでないことは、原判決の判示するとおりであり、また、右のような記載のある船荷証券の所持人において荷場当時外部から運送品そのものにつき損傷等の異常を認め得る状態にあったときは、特段の事情がない限り、運送品そのものの損傷等の異常が運送人の運送品取り扱い中に生じたものと推定することができることも、原判決の判示するとおりである。」

しかし、原審判決は、荷揚げ当時相当数の荷造り箱その他の包につき外部からも中身のタイルが破損している異常を認め得る状態にあったとの事実認定をしているが、これは証拠によらない違法な事実認定であり、また本件タイルの損傷がYの取扱中に生じたと推定することもできない。

「もとより、船荷証券上に「運送品を外観上良好な状態で船積した」旨の記載があり、かつ、同様の状態で荷揚げされた場合においても、包装ないし荷造りされた運送品について荷揚げ当時中味の損傷していることがありうべきであるが、この場合には、その損傷による損害賠償を請求する側において、運送品そのものが健全な状態で船積されたことを立証しなければならないものと解すべきところ、原審は右事実を認定していないのであるから、この点からみても、本件タイルの損傷がYまたはその使用する者の取扱中に生じたものとすることはできないのである。

・・・したがって、原審が前示の証拠及び弁論の全趣旨によって、前示の「運送中の損傷である旨の事実」を直接認定したことには、経験則に反した違法があるものといわなければならない。

そして、債務不履行に基づく損害賠償を請求する訴訟における一般原則に従うときは、本件のような国際海上物品運送契約における運送人の債務不履行による損害賠償請求訴訟においても、運送品の損傷が運送人の船積後荷場前に生じたことの立証責任は、債権者の側にあるものと解するのを相当とするから(本来、債権者は運送品の損傷が運送人の受取後引渡前に生じたことの立証責任を負うのであるが、本件では、船荷証券に、運送品の船積前荷場後に生じた損傷については運送人が免責される旨の約款が記載されていることは原審の認定するところであり、右約款は同法15条3項の規定により有効であるから、債権者は運送品の損傷が船積後荷場前に生じたことの立証責任を負うに帰するのである。)、前示の「運送中の損傷である旨の事実」が認められないことによる不利益は、Xの負担に帰すべきものである。

したがって、前記の違法は、Xの本訴請求を認容すべきものとした原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである」。

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