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財産分与と慰謝料の詐害行為
妻と夫は、婚姻届出をしたが、夫は働かずに飲酒しては妻に暴力を振るうようになり、協議離婚した。
夫が妻に対し、生活費補助として同月以降妻が再婚するまで毎月10万円を支払うこと及び離婚に伴う慰謝料として2000万円を支払うことを約し(本件合意)、これに基づき執行認諾文言付の公正証書が作成された。
銀行は、夫に対して貸し付けた約6000万円の貸金債権を有し、これについて確定判決を得ている。
銀行は、この確定判決に基づき、貸金請求権の内金500万円を請求債権として、夫の会社に対する給料及び役員報酬債権につき差押命令を得た。
妻は、前記公正証書に基づき、生活費補助220万円及び慰謝料2000万円を請求債権として、同じ給料及び役員報酬債権につき差押命令を得た。
会社は、法務局に約261万円を供託した。
裁判所は、妻と銀行の各配当額を各請求債権額に応じて按分した配当表を(本件配当表)を作成したところ、銀行が、異議の申立をした。
@一審は、本件合意が通謀虚偽表示により無効であるとして、妻への配当を0と変更した。
A控訴審は、本件合意は通謀虚偽表示とはいえないが、詐害行為に該当するとして、控訴を棄却した。
B上告審は、以下のように述べて、詐害行為に関する控訴審判決を取消し、差し戻した。
離婚に伴う財産分与は、民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産分与であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない。
(財産分与)
民法第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
このことは、財産分与として金銭の定期給付をする旨の合意をする場合であっても、同様と解される。
そして、離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、右特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取消されるべきものと解するのが相当である。
離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は、配偶者の一方が、その有責配偶者及びこれによって離婚のやむなきに至ったことを理由として発生した損害賠償債務の存在を確認し、賠償額を確定してその支払を約する行為であって、新たに創設的に債務を負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
妻と夫の婚姻期間、離婚に至る事情、夫の資力等から見て、本件合意はその額が不相当に過大であるとした原審の判断は正当であるが、この場合においては、その扶養的財産分分与のうち不相当に過大な額及び慰謝料として負担すべき額を超える額を算出した上、その限度で本件合意を取消し、妻の請求債権から取消された額を控除した残額と、銀行の請求債権の額に応じて本件配当表の変更を命じるべきである。
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