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合意した養育費の民事訴訟の申立
妻と夫は、婚姻し、長男が生まれた。
妻と夫は、協議離婚をした。
妻と夫は、離婚に伴う慰謝料、養育費に関して以下のような合意をした。
@夫は、妻に対し、離婚に伴う慰謝料500万円を、夫の賞与の際に30万円ずつ分割して支払う。
A夫は、妻に対し、長男の養育費として同人が成人するまで、毎月5万円ずつを支払う。
夫は、本件合意に基づく金額を支払わないので、妻は、夫に対して、本件合意に基づき、弁済期の到来した慰謝料分割金、養育費の支払と将来の慰謝料分割金と養育費の支払いを求める本件民事訴訟を提起した。
@一審は、慰謝料の支払に関しては妻の請求を認めたが、養育費に関しては以下のように述べて、その訴えを却下した。
協議が調停調書、和解調書又は公正証書のような執行力のある書面により成立している場合はともかく、協議が右のような執行力のない書面又は口頭により成立してる場合であって、相手方がその協議の成否ないし効力を争い、右協議に基づく履行をしないときは、審判手続によるべきものと解するのが相当と考える。
何故なら、協議に代わる審判は公開主義、弁論主義の採らない非訟手続によることとされているし、仮に養育料に関して訴訟手続により給付判決をしても事情変更の生じる事態は容易に予想され、右事情変更による取消し・変更の必要が生じることは否定できないところ、民法880条で取消し・変更の対象とされているのは協議又は審判のみであり、判決については規定していないからである。
(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
民法第880条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。
A控訴審は、以下のように述べて、一審判決を一部取消し、妻の請求を全部認めた。
養育料の請求は、民法上の扶養請求権に基づくものであるから、その程度又は方法については、まず当事者間で協議をして定め、当事者間の協議が調わないとき、又は協議することができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所がこれを定めることになるが、更に、右当事者間だけでなく、本件のように、扶養権利者である長男の親権者として同人を養育する立場にある妻と夫とが、右両者間において、妻が長男を養育するために要する費用の給付について合意をしたときは、その合意は私法上の合意として有効であり、これに基づいて民事訴訟によりその給付を請求することを否定する理由はない。
もちろん、扶養に関する処分であっても、事情の変更があったときは、長男からの又は長男に対する申立により、その取消し、変更をすることが可能であるが、そうだからといって、夫と妻との間の養育料に関する合意を民事訴訟において実現できないとする理由にならないことは明らかである。
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