後見人の追認拒絶と信義則
最判平成6・9・13民集49巻6号1263頁
<事実>
精神に発達遅滞のあるYの世話や、Y所有の家屋の管理をYの姉Aが担ってきた。
XY間に、Y所有の建物につき賃貸借契約が締結された時も、Aが交渉にあたった。
その後建物の建て替えのためXが一時建物を退去するにあたり、建物建築後に建物の賃貸借契約が実現できない時には、Yは4000万円の損害賠償を支払うという予約がなされた。
ところが、Aは建物完成後に本契約を拒む意思を表明したため、Xが損害賠償を求めた。
1審では請求容認、控訴審継続中にYに禁治産宣告がなされ姉Bが後見人に就職した。
なお、Bはこの間の事情を知っており、一部手続を関与していた。
原審は、(1)Yが包括的な代理権をAに与えていないので無権代理で契約を締結した、(2)本契約を履行してもYの利益を害さない、(3)本契約の締結を拒む合理的理由はなく、(4)Bは契約の予約成立に関与しその内容を知っているから、相手方Xの保護も考慮されるべきであり、Bの追認拒絶は信義則に反するとした。 |
<争点>禁治産者の後見人が、無権代理人によりその就職前に締結された契約の追認を拒絶するためにはどのような条件を必要とするか。
<判旨>
「禁治産者の後見人がその就職前に禁治産者の無権代理人によって締結された契約の追認を拒絶することが信義則に反するか否かは、(1)契約の締結に至るまでの無権代理人と相手方との交渉経緯及び無権代理人が契約の締結前に相手方との間でした法律行為の内容と性質、(2)契約を追認することによって禁治産者が被る経済的不利益と追認を拒絶することによって相手方が被る経済的不利益、(3)契約の締結から後見人が就職するまでの間に契約の履行等をめぐってされた交渉経緯、(4)無権代理人と後見人との人的人間関係及び後見人がその就職前に契約の締結に関与した行為の程度、(5)本人の意思能力について相手方の認識し又は認識し得た事実など諸般の事情を勘案し、契約の追認を拒絶することが取引関係に立つ当事者間の信頼を裏切り、正義の観念に反するような例外的な場合に当るか否かを判断して、決しなければならない」。 |
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