旧姓使用の可否
東京地判平成5・11・19判時1486号21頁
<事実>
関口礼子(X)は婚氏を渡邊と称する結婚をしたが、研究者として自己同一性を確保したいこともあって、関口姓を通称名としてきた。
Y国立大学に採用されたので、Xは、旧姓名を通称名として使用したい旨を大学に申し入れた。
ところが、Y国立大学は、論文等の著者名以外は原則として通称名のみの使用を認めなかった(例外的に、戸籍名(通称名)という表示を認容)。
Xは、国およびY国立大学学長らに対して、戸籍名を使用することを差し止めるとともに、そのことによって生じた損害賠償を国に対して請求した。 |
<争点>旧姓名を通称使用することは権利として認められるか。公務員の場合には、その権利が制約されるか。国立大学教官の場合はどうか。
<判旨>差止請求却下、損害賠償請求棄却
「公務員の同一性を把握する方法としてその氏名を戸籍名で取り扱うことはきわめて合理的」である。
「本件取扱文書に定める基準は、・・・研究、教育活動においては、・・・「関口礼子」を表示することができ・・・、その目的及び手段として合理性が認められ、何等違法なものではない」。
「なるほど、通称名であっても、個人がそれを一定期間専用し続けることによって当該個人を他人から識別し特定する機能を有するようになれば、・・・その個人の人格の象徴ともなりうる可能性を有する」。
しかし、公務員の服務および勤務関係において、旧姓名が「通称名として戸籍名のように個人の名称として長期間にわたり国民生活における基本的なものとして根付いて」おらず、「また、通称名を専用することは未だ普遍的とはいえず、個人の人格的生存に不可欠なもの」とはいない。 |
慰謝料などの無料法律相談はこちらから
Amazonで慰謝料について調べる
|
|